戦後70年 硫黄島で戦った元海兵隊の思い
安倍首相は、先月26日から1週間の日程でアメリカを公式訪問した。今回の訪米のハイライトともいえる先月30日の連邦議会での演説では、1人の元海兵隊員が紹介された。94歳のローレンス・スノーデン氏が、戦後70年にわたり抱き続けてきた思いを取材した。
元アメリカ海兵隊中将・スノーデン氏は今年2月、身を切るような寒風の中、バージニア州アーリントンで行われた式典に列席していた。スノーデン氏は、戦史に残る激戦といわれた硫黄島での戦いで生き残った元海兵隊だ。
スノーデン氏「戦没者に敬礼できることは素晴らしいこと。寒さが気にならないほど良い日だ」
スノーデン氏が敬意を払うのは、アメリカ兵だけではない。
「私たちはアメリカ兵のように、勇敢に戦った日本兵にも敬意を払っている。彼らは優れた兵士だった」と話す。
戦後、在日米軍の参謀長も務めたスノーデン氏。
「戦時中には、日本人に対して強い憎しみを抱いていたが、今となってはそんな感情を抱く意味は何もない」
戦後50年を機に企画した日米合同の追悼式典は、今でも続いている。20年前、硫黄島守備隊の栗林司令官の妻が残したメッセージが、スノーデン氏の思いと重なった。
「彼女のメッセージは、“きのうの敵は、きょうの友”。戦争を二度と繰り返さないように、共に協力せねばならない」
あれから70年。先月30日のアメリカ連邦議会での演説で、安倍首相は、「し烈に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になりました」と、かつては敵だった栗林司令官の孫の新藤義孝議員とスノーデン氏を紹介。握手を交わした2人が象徴したのは、「かつての敵対国が、不動の同盟国となった」という日本とアメリカのたどった歴史だった。
歴史を知ること、和解の道を追求することの意義を、老兵は静かに訴えかけた。