【解説】“原因不明”子どもの急性肝炎 西浦教授「オミクロン株が影響する可能性」 英・保健省“6つの仮説”公表
原因不明の子どもの急性肝炎について、欧米などを中心に報告が相次いでいます。厚生労働省の専門家会議で11日、京都大学・西浦博教授が、新型コロナウイルスのオミクロン株との関連について分析したデータを示しました。「重症化も相次ぐ」、「コロナ感染が関係?」、「原因6つの仮説」の3つのポイントについて詳しく解説します。
WHO(世界保健機関)によると、これまでに報告された患者数は世界で348人です(10日発表)。最も多いのはイギリスで、英・保健省によると、3日までに163人の患者が確認されています。
アメリカでも6日までに109人報告されています。米・CDC(疾病対策センター)によると、90%以上が入院し、14%が肝移植を受け、5人が亡くなったということです。
そして、日本では、7人の“疑いがある事例”が6日までに報告されています。7人はいずれも肝移植はしていないということです。
そもそも、この原因不明の急性肝炎がどういったものか、おさらいします。WHOによると、患者の年齢は生後1か月から16歳までということです。主な症状は吐き気、下痢、腹痛、目や皮膚が黄色く見える黄だん、白い便などです。
現時点で有力視されている原因の1つがアデノウイルスです。アデノウイルスは、プール熱や胃腸炎などの原因となるウイルスで、アメリカでは半数以上の患者からアデノウイルスが検出されています。
ただ、一般的には、アデノウイルスが原因で子どもが肝炎になることは非常にまれです。日本では疑いのある7人のうち、アデノウイルスが検出されたのは1人のみでした。アデノウイルス以外にも原因があるのではないかと、分析が現在進められています。
こうした中、11日に開催された厚労省の専門家会議で、京都大学・西浦博教授が「小児重症肝炎の患者」のデータを示しました。
西浦教授によると、OECD(経済協力開発機構)加盟国など39か国を対象に調べたところ、急性肝炎で重症化した事例の報告があった12か国は、報告がなかった他の27か国と比べて、オミクロン株の感染者が多い傾向が確認されたそうです。
西浦教授は、「オミクロン株の先行感染が影響する可能性がある。過去にオミクロン株への感染歴があることが、急性肝炎に影響する可能性があるかもしれない」と指摘しました。
新型コロナウイルスとの関係についてはWHOも、「新型コロナの感染歴、現在感染していることが原因か、注視すべきポイントである」との見解を示しています。実際、イギリスでは、検査した患者の18%から新型コロナウイルスが検出されているといい、コロナとの関連も分析が進められています。
謎だらけの急性肝炎の原因について、患者の多い英・保健省はさまざまな仮説を公表しています。
・仮説1 通常のアデノウイルス感染
新型コロナの影響を受けて、外部との接触を控えた結果、免疫力が弱まり、アデノウイルスへの感受性が高まり、肝炎にかかりやすくなったケースなどが考えられるということです。また。過去に新型コロナ、その他の感染症にかかったことで、アデノウイルスへの感受性がより高められてしまったケースなどが考えられるということです。
通常のアデノウイルス以外の仮説も打ち出されています。
・仮説2 変異したアデノウイルス
・仮説3 新型コロナの後遺症
・仮説4 薬物摂取や外部環境
「薬物」は特定の鎮痛剤に含まれる成分が指摘されているということです。また、「外部環境」については、犬が関わっている可能性が指摘されています。
英・保健省によると、調査した人の約7割が家で犬を飼っているか、何らかの形で犬と接触した形跡があったということです。ただ、イギリスでは犬を飼っている家庭は非常に多いので、これが直接的な要因かどうかは慎重に調べる必要があるということです。
英・保健省は、この他にも次のような原因が考えられるとしています。
・仮説5 未知の病原体
・仮説6 新型コロナの新たな変異株
原因はわかっていませんが、現時点でできることは新型コロナの基本的な対策と同じです。ご家庭で子どもの体調に気を配ること、こまめに手洗いを行うことなど、基本的な感染対策を続けましょう。