【解説】日本初 “原因不明”子どもの急性肝炎か 日本でも? サインとなる症状とは
原因不明の子どもの「急性肝炎」が欧米などで広がっています。25日、日本国内でも初めてその可能性がある事例が報告されました。「海外では死亡例も」、「人から人への感染は?」、「サインとなる症状」、以上の3つのポイントについて詳しく解説します。
国内での「急性肝炎」が報告されたことを受けて、後藤厚生労働相は26日午前会見を開きました。
後藤厚労相
「該当する入院症例が1件発生した旨の連絡がありました。今の段階で肝炎について、特定の症状をお示しして注意喚起するという状況にはない」
どのように気をつけたらいいのか、特徴のある症状すらわかっていないのが現状です。
ただ、海外では既に多くの事例が報告されています。WHO(世界保健機関)によると、今月21日までに海外で報告された「急性肝炎」の患者は、少なくとも169人です。最も多く報告されたのはイギリスで114人です。次いで、スペインで13人、イスラエルで12人、アメリカで9人、あわせて12か国で報告されています。
注視したいのが、その年齢と症状です。WHOによると、患者169人の年齢は生後1か月から16歳までです。そして、患者全体の約10%にあたる17人は肝移植が必要になり、少なくとも1人が死亡したということです。
そもそも、「肝炎」とはどういうものなのでしょうか。肝炎は肝臓に炎症が起こって、細胞が破壊されている状態のことです。肝炎は慢性のものと急性のものがありますが、今回の原因不明の肝炎は急性です。急性肝炎は、一般的に経過は良好ですが、まれに「意識障害など劇症化して死に至るケースもあるそうです。
この肝炎ウイルスは、A、B、C、D、E型の5種類に分けられます。今回、原因不明の肝炎では「AからEの、どの型のウイルスも検出されていない」ということです。 つまり、肝炎ウイルスが原因ではないが、肝炎の症状が出ているということなのです。
まだ分析が進められている段階のため、はっきりと言えませんが、実は多くの患者から感染性ウイルスが検出されていることがわかっています。169人のうち74人から検出されたのが「アデノウイルス」です。アデノウイルスは鼻やのどから入って感染します。特に夏場は、プールの水を介して感染する「プール熱」になることで知られています。アデノウイルスは感染力が強く、せき・くしゃみによる飛まつ感染、接触した手を介した経口感染もします。
さらに、19人からアデノウイルスと同時に、新型コロナウイルスも検出されたということです。さらに、新型コロナワクチンの副反応である可能性について、WHOは「患者の大多数がワクチンを接種していないため、副反応とは考えにくい」としています。いずれにしても、なぜ肝炎になったのか、原因が何なのか、まだわかっていません。
■「急性肝炎」のサイン イングランドで確認された症状とは?
では、日本国内での「急性肝炎」の報告は、どのような内容だったのでしょうか。厚生労働省によると、報告があったのは16歳以下の子どもで、性別や年齢などは明らかになっていません。新型コロナウイルスとアデノウイルスの検査では、陰性だったということです。
厚労省は海外で報告が相次いでいることを受けて、自治体と日本医師会に同様の症状の症例があった場合、報告するよう通知を出していました。すると、21日に1件報告があり、25日に検査結果が出たということです。日本ではこの1件のみで、検査中のものなども今のところはないそうです。
ただ、もし自分の子どもや家族が「急性肝炎」になった場合、いち早く気づくことが大事になってきますので、そのサインとなる症状を紹介します。
イギリス保健省によると、イングランドで確認された患者81人の症状を調べたところ、特に多かったのは目や皮膚が黄色く見える「黄だん」や「おう吐」でした。この2つの症状は、7割の患者で見られたそうです。他にも、「白っぽい便」、「無気力になる」、「下痢を含む胃腸の症状」、「吐き気」、「発熱」の症状があったということです。
では、どういうことに気をつけたらいいのでしょうか?
中野教授によると、仮に「アデノウイルス」が原因だった場合、先ほど説明したように、接触や飛まつで感染するため、こまめに手を洗うことが何より重要ということです。さらに、タオルなど身の回りのものは、他の人と共用しないのも対策の1つということです。
新型コロナウイルスと共通する感染経路でもあるので、基本的な感染対策をこれまで通り丁寧に行うことが大事だということです。
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「急性肝炎」は、まだまだわからないことだらけです。コロナ禍で続けてきたように子どもの体調の変化に気を配ること、基本的な感染対策を行うことが大事です。
(2022年4月26日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)