「もう普通の生活に戻ることは…」 戻る人、戻りたくても戻れない人 NYのウクライナ避難民の揺れる思い
ロシアの侵攻から半年、ウクライナから国外に逃れた人は1100万人を超えましたが、一方で、帰国した人も500万人近くにのぼります。ふるさとに戻る人と、戻りたくても戻れない人。葛藤に揺れる避難民の思いを取材しました。
■激戦地で戦う兄を誇りに…イブゲンくんが友人らと別れウクライナに戻る日
8月24日、アメリカ・ニューヨークのセントラルパークに、ウクライナの国旗が掲げられました。ロシアによる侵攻開始から半年、ウクライナからの避難民らがふるさとへの思いを訴えます。
アメリカには現在、およそ12万人が避難しています。中でも「リトル・オデーサ」と呼ばれる地区には、多くの避難民が暮らしています。
NNNは、ウクライナの子どもたちの心を癒やすサマーキャンプを訪ねました。
──ウクライナを応援する歌を歌おうよ ふるさとが助けを求めているから
避難生活が長引く中、遠く離れたふるさとへの思いを日に日に強くする子どもたち。首都キーウ近郊から避難した8歳のイブゲンくんもその1人です。兄はウクライナ兵として東部の激戦地で戦っています。
イブゲンくん「ウクライナが領土を取り戻そうとしていることを描きました。これがぼくのお兄ちゃん」
国を守るため戦う兄が誇りだと話すイブゲンくん。自宅周辺の戦況が落ち着き、ウクライナに戻ることになりました。
避難生活を共にした友人らとの別れの日。ウクライナで再会できる日まで、無事を祈ってお互いにエールをおくりました。
──ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光あれ!
イブゲンくん「早く全員がウクライナに戻って幸せな時間を過ごせるようになることを願っています」
■戦争によるPTSD、両親は自宅が破壊された事実をティムくんに伝えず「NYに残ったほうがいい…本当につらい」
帰国を決断した人がいる一方、戻りたくても戻れない人が多いのが実情です。
キーウ近郊のイルピンから避難してきたティムくんと母親のオレナさんは、いまも帰国できていません。避難生活の支えは、ウクライナに残る父親ゲンナジーさんとの電話です。
ゲンナジーさん「ティム、英語は話せるようになった? 英語で何か言ってくれる?」
ティムくん「I like mama(ママが好き)」
ロシア軍による激しい攻撃にさらされたイルピン。
ゲンナジーさん「ここはティムの部屋で、ベッドが置いてありました。爆発があって壁が壊れています。ドアは吹き飛ばされました」
ティムくんは戦争によるPTSD(=心的外傷後ストレス障害)と診断されたといいます。これ以上、息子を不安にさせたくないと両親は自宅が破壊された事実を伝えていません。
ゲンナジーさん「ニューヨークに残ったほうがいいと思います。家族と会って話せないのは本当につらい。プーチンのくそったれ」
ティムくんの母親 オレナさん「もちろん明日にでも(戦争が)終わってほしいです。でもそれが無理ということはわかっています。もう普通の生活に戻ることはできないのです」
家族3人、再びウクライナで暮らせる日はいつ来るのか──。離れ離れの生活が終わる兆しは見えないままです。