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米国40年ぶりの原油輸出再開 背景に迫る

2016年3月18日 16:07
米国40年ぶりの原油輸出再開 背景に迫る

 原油の抽出などを可能にした「シェール革命」と呼ばれる新たな技術により、世界最大規模の原油生産国に躍り出たアメリカ。そのアメリカが40年ぶりに原油輸出を再開した。その背景に迫る。


■43年ぶりの輸入 歴史的な転換点
 今月11日、アメリカ・テキサス州の港から原油を積んだタンカーが日本に向けて出港した。

 アメリカはオイルショック後の1975年から国内の原油の備蓄を確保し、ガソリン価格などを安定させるため、原油の輸出を禁止してきた。このため、日本がアメリカから原油を輸入するのは43年ぶりだ。

 コスモ石油・中山真志原油外航部長「日本の調達原油が割安になるのは間違いない。色々マーケットを見て、きょうはアメリカが一番安いという日に、以前はアメリカから買えなかった。それが買えるようになったということは、日本に入る原油の単価を下げることができる。それが一番大きなメリットです」

 原油を輸入に頼る日本にとって調達先が増える歴史的な転換点だ。


■アメリカの原油輸出再開、なぜ?
 アメリカはなぜ、輸出再開に舵を切ったのだろうか。私たちは原油の生産地に向かった。

 油田を20か所有するポール・ケンウォーシーさん。この油田からは30年間、毎日約30バレル、現在の価格で10万円以上の原油が採れるという。

 ポールさん「この原油が商業取引所で取引され、アメリカ産WTI原油の価格を決めている。まさにその原油だよ」

 ゆっくりと動く巨大なポンプが、一面見渡す限りの広大な大草原に。大小様々な企業が競い合うようにこのポンプを設置して原油をくみ上げているのだ。

 ポールさん「今年はじめのピーク時に、アメリカは歴史的な量の原油を生産したよ」


■「シェール革命」
 さらに、アメリカを原油大国に変えたのは「シェール革命」の存在がある。10年ほど前からシェール層と呼ばれる岩石の隙間から原油や天然ガスを採り出せるようになった。

 シェールオイルの掘削現場を訪ねた。高さ40メートルもある「リグ」と呼ばれる装置を使い、地下深くのシェール層を掘り当てていた。

 これらの開発が加速したことでアメリカの原油の生産量は急増。2014年、サウジアラビアやロシアを抜いて世界のトップに躍り出た。その一方で、禁止されたままの輸出。結果、原油の在庫が積み上がっていった。

 シェールオイル生産者のトミー・テイラーさん「世界市場は原油の供給過剰状態だ。その結果、原油価格が劇的に下落した。アメリカの原油貯蔵タンクは、満タンの状態だ」


■3分の1に価格急落 業界が求めた輸出解禁
 中国の景気低迷など世界的な需要の減少も重なり、2年前には1バレル100ドル以上あったアメリカ産の原油価格は急落。現在、3分の1の35ドルほどで取引されている。

 倒産する企業も相次ぐ中、アメリカの石油業界が強く求めたのが原油の輸出だった。そして、アメリカ政府は去年12月、40年ぶりに原油の輸出解禁を決めたのだ。

 トミーさん「私たちは車や電気製品を(日本から)輸入している。そして私たちは日本が必要な原油を生産する。それは良いバランスだ」


■日本にとっては希望の光
 日本国内でガソリンや飛行機の燃料などに生まれ変わるアメリカ産の原油。調達の8割を中東諸国に頼ってきた日本にとっては希望の光だ。

 コスモ石油・中山真志原油外航部長「(今後)中東で紛争が起きても、原油の調達が滞りなくできる。安定調達という意味で大きなメリットがある」

 エネルギーの輸出国へと転換したアメリカ。価格低迷で混乱する世界の原油市場をさらに不安定にさせる可能性を秘めている。

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