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ウクライナの兵士に広がる「精子凍結」 人口減少の解決策として期待 “死後”課題も…

2023年7月7日 6:06
ウクライナの兵士に広がる「精子凍結」 人口減少の解決策として期待 “死後”課題も…

激しい攻防が続くウクライナでは、軍などに参加する兵士の「精子凍結」の動きが広がっています。女性などが国外に避難し、近い将来、人口の減少が懸念される中、問題解決の方法として期待されています。

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私たちは、ウクライナ西部のリビウにある不妊治療専門クリニックを訪ねました。ガウンやキャップの着用を求められた取材班が案内された先に保管されていたのは、凍結保存された精子です。液体窒素の中で、常にマイナス196℃に保たれているということです。

その多くはウクライナ軍などに参加する兵士のもので、去年から預ける人が増え続けているといいます。

不妊治療専門クリニック イリーナ・ケドルンさん
「戦争に行く兵士はもう戻らないかもしれないと分かっているからです。凍結保存された精子を解凍すれば、何かあっても自分の子どもを持てる可能性を高めることができます」

このクリニックでは、精子を凍結し1年間預かる費用、日本円で約2万6000円を完全無料にしました。

キーウ市内にあるクリニックでも無償で精子を保管。こうした動きが、ウクライナ各地で広がっています。

キーウ市内に住むイリーナ・トカチュクさん(30)は去年12月、兵士の夫と話し合い、精子を保存しました。

イリーナ・トカチュクさん(30)
「いつ出発するか、聞いた?」

夫・オレシさん(29)
「いや、まだ分からない。『準備するように』とは言われているよ」

夫は間もなく、東部の前線に派遣される予定です。

イリーナ・トカチュクさん(30)
「私と夫は常に子どもが欲しいと思っていました。戦争では、ケガの危険性など様々なリスクがあります。精子の凍結が私たちを救うことになると考えました。子どもを持つという夢のためにも」

精子凍結を選んだ別の夫婦にも話を聞きました。2人とも軍で働いています。

妻・スヴェトラーナさん(43)
「一番の理由は、夫が私のそばからいなくなってしまう可能性があるからです」

夫・ミコラさん(43)
「前にも子どもが欲しいと思っていましたが、戦争が始まってから『より早くつくりたい』と思うようになりました」

妻・スヴェトラーナさん(43)
「双子が欲しいです」

夫・ミコラさん(43)
「双子は大変ですが、反対ではありません」

現在、ウクライナでは戦闘要員の対象となる18歳から60歳の男性は国外に出ることが禁じられています。一方、女性や子どもの多くが国外に避難。近い将来、人口の減少が懸念されています。

ウクライナでは、精子凍結が問題解決の方法として期待されているのです。ただ、大きな課題もあります。

精子凍結の問題に詳しいオレナ・バビチ弁護士
「現在、男性が死亡した場合に、その精子の使用に関わる手続きは、法律上で定められていないんです」

ウクライナでは今、精子を預けた人が死亡した場合の明確な規定がなく、仮に未婚だった場合、多くは死後、精子の使い道がないままクリニックが保管し続けることになるのです。

オレナ・バビチ弁護士
「死後の精子が使用できるような法律を定めなければなりません」

(7月6日放送『news zero』より)

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