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1週間で3つの文学賞を受賞 話題の小説『地雷グリコ』 誰もが知るゲームが題材…その魅力とは

2024年5月22日 6:40
1週間で3つの文学賞を受賞 話題の小説『地雷グリコ』 誰もが知るゲームが題材…その魅力とは
KADOKAWA刊 青崎有吾『地雷グリコ』
1週間で『本格ミステリ大賞』 『日本推理作家協会賞』 『山本周五郎賞』の3つの賞を次々と受賞し、話題になっている小説があります。それは、青崎有吾さんの『地雷グリコ』です。受賞後の反響や、読者に支持されているポイントなどを取材しました。

■物語で描かれる“定番ゲーム✕特殊ルール”

出版社の書籍紹介ページでは、“本格頭脳バトル小説”と紹介されている『地雷グリコ』(2023年11月出版)。主人公は、女子高生の射守矢真兎(いもりや・まと)です。勝負事にやたらと強い彼女が、風変わりなゲームに巻き込まれていきます。

グリコ・パイナツプル・チヨコレイトというフレーズでおなじみの階段を使ったゲームに、ワナの位置を読み合う要素を追加した『地雷グリコ』や、百人一首の絵札を用いた神経衰弱『坊主衰弱』など、作品には全5篇を収録。“じゃんけん”や“だるまさんがころんだ”など、定番の遊びに新たなルールを加えた数々のゲームに真兎が参加し、強者を次々と打ち破っていく姿が描かれています。

著者の青崎有吾(あおさき・ゆうご)さんは、1991年神奈川県生まれ。明治大学在学中の2012年、『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞し小説家デビューしました。

これまでに手がけた作品は『水族館の殺人』『図書館の殺人』、ドラマ化した『早朝始発の殺風景』『ノッキンオン・ロックドドア』シリーズなど。週刊ヤングジャンプで連載中の『ガス灯野良犬探偵団』(漫画:松原利光さん)の原作も担当しています。

■選考委員が評価「読んだことがないような面白さ」

ここ最近の受賞を振り返ると

・5月10日(金) 『第24回本格ミステリ大賞』【小説部門】受賞

・5月13日 (月) 『第77回日本推理作家協会賞』【長編および連作短編集部門】受賞
(選考委員:芦辺拓さん、宇佐美まことさん、喜国雅彦さん、月村了衛さん、葉真中顕さん)

・5月16日 (木) 『第37回山本周五郎賞』 受賞
(選考委員:伊坂幸太郎さん、江國香織さん、小川哲さん、今野敏さん、三浦しをんさん)

7日間で、3つの文学賞を受賞しました。

『第77回日本推理作家協会賞』選考委員の葉真中顕さんは、「連作短篇集であり、ゲームを題材にするにあたって1話ごとに大胆さが増していき、設定も大きくなる、という構造が、読みなれない人にも間口が広く、読んだことがないような面白さ」「テーマとして、ゲームとは何か、が非常によく考えられた作品」と、この作品を評価しました。

■受賞後、書店注文が5倍に 読者に支持されるポイントは?

出版社はこの受賞を受けて「書店からの注文は受賞前週と比較して5倍に跳ね上がり、これを受けて重版6刷を決定しました」と反響を明かしました。

また、読者に支持されているポイントを『地雷グリコ』の編集担当に取材すると「ミステリ読みからは、勝利に至るまでの論理(ロジック)の美しさ・面白さが評価されています。イカサマや運頼みがほとんどないため、勝利の瞬間に“なるほど” “その手があったか”と納得・驚がくできて気持ちいい、そんな感想が耳に入っています」とコメント。そして「こんなゲームをどうやって思いつくの?、自分も遊んでみたい、という声が寄せられています」と、誰もが知る遊びを少しひねったゲームの面白さも注目されているといいます。

さらに「人物たちが好きだと言ってくださる方も多いです。高校生らしいやりとりが読んでいてほほ笑ましい、というものから、高校生たちが、自分なりのこだわりや譲れないものを明確に持っていて、その姿が格好いい、といったものまで。青春小説としての魅力を感じてくださっている方も多いようです」と、作品に登場するキャラクターたちも支持されているそうです。

この勢いにのり、『地雷グリコ』が今後も文学賞を受賞していくのか注目されます。

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