「16×18」が頭の中で解ける “小学生向け”暗算ドリルが大人にウケる理由
5月9日発表の「トーハン調べ 週間ベストセラー」総合ランキングで、2023年本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』、村上春樹さんの新作『街とその不確かな壁』に次いで3位にランクインしたのが、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』。発売から約5か月たった今も売れ続け、発行部数41万部(出版社発表)を記録しています。対象は小学生ですが、幅広い世代で人気だというこの学習参考書。その理由を取材しました。
本の内容は、「11×11」から「19×19」までの「十の位が1の、2ケタの数同士の計算」が、頭の中でできるようになるというもの。たとえば「16×18」を電卓以外で解こうとすると、紙を用意して筆算を書き解く人が多いと思います。しかし、この本1冊を通して学習できる“おみやげ算”という方法(記事の最後に記述)を身につけると、九九のようにすらすらと暗算できるようになるといいます。
■編集者も驚きのヒット その要因は“大人”
編集を担当したのが、出版社で入社9年目の吉田瑞希さん(30)。吉田さん自身は文系で、学習参考書を担当するのは初めてだったといいます。取材すると、ヒットの裏に“大人”というキーワードが隠されてました。
――累計40万部を超えるヒットに。想定していましたか?
吉田:誰が(この本を)買っているのかを見失いました(笑)。タイトルが「小学生が~」と言っているので、小学生かその親御さんに最初は届いているのかなと思っていたのですが、10万部を超えたあたりから「あれ?」って。
――編集者として、なぜここまで異例のヒットになったと捉えていますか?
吉田:問い合わせとかレビューを見ていると、どうやら「お孫さんがいる世代」が買っているのがわかって…。大人ですね。(感想の)お電話をいただいたりするんですけど、全部60代後半から70代の方で。年齢層が想定しているよりも広かった。お子さんの需要も満たしつつ、「脳トレをしたい大人」にまですごい勢いで広がったのが一番の要因だったと思っています。
――具体的にどういう感想が届いていますか?
吉田:「自己肯定感が上がった」という、全く考えていなかった感想をいただくことが多くて。「新しい知識を大人でも身につけられる」達成感で(自己肯定感を)覚えているのかなと。「うれしかったので、お孫さんに自分が教えたい」というお手紙・お電話をいただく方もいらっしゃいます。