高額請求“だましのマニュアル”を入手──元メンバーの男性「狙い定めてぼったくる」 “おいしい客”は?【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「高額請求“だましのマニュアル”」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●「修理追加」の巧妙手口
●狙われる“おいしい客”は?
「家のエアコンがどうも壊れてしまったな、トイレの調子が悪いなといった時にインターネットで業者を見つけて修理を頼むことがあると思うんですが、その際にだまされて高額な請求をされたというケースが後を絶ちません」
「なぜ、だまされるのか。だます側に“だましのマニュアル”が存在するんです。それを今回入手しましたので、お見せしたいと思います。きっかけは今年2月、every.で#みんなのギモンとして放送した内容です」
「埼玉県内で一人暮らしをする50代の女性が『金額聞いてぶっ飛びました。え!?って』と振り返ります」
「この女性は自宅トイレの温水洗浄便座が壊れてしまったために、ネットで見つけた修理業者に交換を依頼しました。すると『床下まで工事が必要』と言われ、90万円もの高額請求をされました」
小野解説委員
「この放送を見たある男性から、日本テレビの情報提供サイトに連絡がありました。『私は家の電気修理をして高額請求をするグループにいました』とのこと。つまり、だます側にいたということです。その男性が今回、その手口を語りました」
「男性はどういう人物だったのでしょうか。家庭内のコンセントやブレーカーなどの電気の修理をして高額請求をするグループの一員でした。属していたグループも、ホームページで『安く電気修理をやります』とうたっていました」
「男性は『罪の意識から内情について話したい。被害者が出ないようにしたい』という思いで、日本テレビに連絡。詳しい話を聞きました」
“ニセ修理”に関わった男性
「誰に対してもやるのではなく、狙いを定めてぼったくるというスタイルですね。直さなくてもいいところを直したり、本来なら請求されずに済んだものを請求しているので、正しくはないですよね」
「原因が分かっていても、すぐには言いません。コレやってみます、アレやってみます、ダメですね、じゃあ次コレだ、というふうにどんどん作業数を増やしていく。作業数を増やすということは金額も上がっていく」
森圭介アナウンサー
「そもそも素人が分からないことが多いわけじゃないですか。工事って誰でもできるんですか? 資格が必要だったりしないんですか?」
小野解説委員
「電気の配線が関わる工事の多くは資格が必要ですが、アンテナの調整など簡単な作業だと必要ありません。男性のグループの場合、メンバーのほとんどは資格がなかったということです。そのためネットの動画を見て工事の仕方を覚えるよう指示されていたそうです」
「例えばコンセントやライトの交換、ブレーカーやテレビアンテナの工事の仕方などを、ネットの動画で覚える。プロじゃないですよね」
森アナウンサー
「素人ですよね」
小野解説委員
「このグループはどんな手口で高額請求をしているのか。“だましのマニュアル”があり、それがLINEグループでメンバーに共有されていたといいます。そのマニュアルを見せてもらいました。そのままの画面はお見せできませんから、内容を紹介します」
「そこには手順が書かれていました。まず、依頼主からの電話を受けます。次にどんなところが悪いのか、修理の依頼内容を聞きます。『ご自宅に伺います』と訪問のアポイントを入れます。そして不具合の箇所を見せてもらいます」
「ここまでは普通の手順ですが、問題はここから。依頼されたこと以上に高額請求できそうなことを探す、といいます。例えばコンセントの不具合なら、『根本的な原因は別の場所にあり、そこから直す必要がある。ちょっとお金かかるんですけどね』などと伝えます」
「最初から高額請求をすると客に警戒されるので、最初はコンセントの交換など簡単なものの値段を安く提示する。信用させておき、それより値段の高い工事の話を徐々に持ちかけていくということなんです」
桐谷美玲キャスター
「どういう工事か詳しいことはよく分からないですし、安いものから提示されると信用してしまうという気持ちも分かりますね」
小野解説委員
「マニュアルにはこうも書かれています。説明は胸を張って行う。自信を持っていけ、ということなんですね。ブレーカーに不具合があるように見せて、分電盤の交換を高い値段で探るとのことです」
「次に、根本的な原因を修理しないと直らないと、再度説明する。そして客が納得しない場合に値段を下げる。それでもダメなら諦めて、早く次の現場に行く。そして契約が取れたら、できれば追撃も狙っていく」
河出奈都美アナウンサー
「追撃という言い方がまた…。さらに請求するということですよね?」
小野解説委員
「そうです。だませると見込んだ客には、さらにアレもコレもと修理箇所を増やして代金をつり上げていくというわけです」
小野解説委員
「どういう人が“おいしい客”なのか。これもマニュアルから見えてきます」
「金がある家かない家か、いくらまで払えそうかを見定める。おいしくない案件は早く電話を切る。見積もりがしつこい客は金にならないので、相手にしない」
「そして、金を稼ぐことに執着する。少ない稼ぎを何年も続けるのか、それとも短期間で高額を稼ぐのか。お金を取れるところからどんどん取ってこい、と発破をかけているわけです」
小野解説委員
「どのようにターゲットを絞るか、具体的な話も男性に聞きました」
“ニセ修理”に関わった男性
「『状況判断』というのがありまして。家の大きさ、賃貸か否か、乗っている車、仕事、家族構成、お金を出す人が誰なのか。女性の一人暮らしであったり、『一番いいのは高齢者』と僕らは言われてやっていました」
「お年寄りだと特にネットでいろいろ調べたりしないというのもあるので、それで高額請求をしやすいということになりますね」
鈴江奈々アナウンサー
「自分の母とコミュニケーションを取っていても、『機械の使い方や携帯の使い方が分からないから教えて』とよくヘルプを求められるんですけど、分からないと『いいから早くやっちゃって』とお願いしちゃう気持ちも分かりますよね」
小野解説委員
「年齢や性別だけじゃないんです。時間についてのマニュアルもあるんです。早朝・深夜にかかってくる電話は『急いで直してほしい』など金額が取りやすい、客には考えさせる時間や知識を与えない、としています。『早くしないと』と急かしてくるんです」
桐谷キャスター
「時間があったら修理代の相場なども調べられますし、私はネットの口コミなども見るんですけど、そういう時間を与えないということですよね」
森アナウンサー
「困っているし、急いでいるという。立場が下になっちゃうところを狙っているというのが悪質ですよね」
小野解説委員
「どのぐらいの人が、こうした手口に巻き込まれているのか。トイレやカギの修理などのトラブルに対応する、いわゆる“暮らしのレスキューサービス”。国民生活センターによると、相談件数は2014年度に1877件でしたが、2023年度には7449件に増えています」
「注目すべきは、ネット広告がきっかけとなる割合が年々増え、今や半分以上です。ネット広告自体が増えていることも相談件数が増加している一因とみられます。他にも、郵便受けに入っていたチラシの業者に依頼したら高額請求されたというケースもあります」
鈴江アナウンサー
「あらためて、どんなことに気を付けたらいいでしょうか?」
小野解説委員
「国民生活センターによると、だまされないためにできることは、まず複数の業者から見積もりを取るということです。そして、契約する前に家族や友人に相談をする」
「『今すぐ修理しないといけない』と契約を急かされても、一旦冷静になりましょう。きっぱり契約を断るということも大事になりそうですね」
(2024年5月22日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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