【解説】イランのライシ大統領死去で何がどう変わる?
イランの国営メディアが、イランのライシ大統領がヘリコプター事故で死去したと伝えました。イランでは最高指導者ハメネイ師の権力が絶対とされていますが、後継者候補とされていたライシ大統領の死去で、何がどう変わるのでしょうか?
■ライシ大統領の人物像
63歳で亡くなったライシ氏は、イラン北東部出身のイスラム法学者です。イランでは1979年に王政打倒の革命が起きてから、イスラム教シーア派の法学者が国を統治してきました。保守強硬派のライシ氏は2022年、イランの女性が髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」のかぶり方をめぐって逮捕された後に急死したことで抗議デモが起きた時、デモに参加した人々を厳しく弾圧しました。また、国際政治では反欧米色が強く、ロシアや中国との距離を縮めています。ガザ情勢ではハマスを支持し、4月にはイスラエルへの直接攻撃に踏み切りました。
■「大統領」と「最高指導者」の違い
ライシ氏は2021年に大統領に就任してから、前任のロウハニ元大統領と違って、ハメネイ師に忠誠を尽くしてきました。ハメネイ師は事故の一報が伝えられた後、「混乱はない」と強気の姿勢を見せました。実際、軍や行政、外交などをすべて掌握しているイランの最高権力者はハメネイ師で、「大統領」はあくまでも行政府の長にすぎません。ハメネイ師が指揮を執っている限り、国政に大きな混乱は起きないとみられています。
■後継者選びで混乱も…?
一方、ライシ氏が死去したことで、ハメネイ師は有力な後継者候補を失ったことになります。大統領が死亡した場合、50日以内に新たな大統領を選出する手続きをしなければなりません。ハメネイ師は85歳と高齢で、健康不安説もたびたび取りざたされています。今のところ、ハメネイ師の代わりに、これといった人物はいないとみられているため、今後、後継者争いが激しくなり、国内に混乱が生じる可能性もあります。ただ、イランの大統領選挙では、後継者選びに最高指導者が影響力を持つので、ハメネイ師の意に沿わない候補者は出馬できないのではないかとも言われています。イランの後継者選びは中東のみならず、国際情勢にも少なからず影響を与えるため、どのような人物が次の大統領に選ばれるのか、世界から注目されています。