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“中国関係悪化”経済にも影響 台湾のいま

2016年10月28日 15:39
“中国関係悪化”経済にも影響 台湾のいま

 台湾では今年5月に独立色の強い政権が誕生して以降、中国との関係が悪化していて、その影響は経済にも出ている。いま、台湾では何が起きているのか。

 今月5日付のアメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」。台湾の蔡英文総統がインタビューに答える記事が掲載された。

 台湾初の女性トップで、自ら「台湾人」という言葉を使い、「圧力で屈服させることはできない」と中国にクギを刺した。その「圧力」とは…。

 先月行われた国連の民間航空について話し合う専門委員会。台湾は前回、ゲストとして参加したが、今年は参加を認められなかった。台湾側は「中国の圧力が原因だ」と激しく反発している。

 就任から間もなく半年がたつ蔡総統。「台湾には独立した主権がある」と主張し、独立派とされる民進党の党首だ。ただ、就任後、中国が最も重視している「一つの中国」については言及を避けている。

 前の国民党政権は中国との融和政策を進め、去年11月には歴史的な首脳会談が行われた。中国は「台湾は中国の一部である」という姿勢で、独立派の新政権に対しては一転し、圧力を日増しに強めている。

 特に深刻な影響が出ているのが経済面だ。台湾の観光地・中正紀念堂。蒋介石の遺品などが展示されていて、中国人に人気の観光地だったが、今は観光客はまばらだ。

 観光業者は「派手好きで金の使い方が違う。中国人観光客は特に大事だ」と口をそろえる。台湾では今年8月、前年同期比で中国人観光客が約55%も減った。

 この異変に、観光業者は悲鳴を上げた。先月、旅行会社の社員らが行ったデモには約1万人が参加。「両岸は一つの家族のように親しい」と書かれた旗を手に持ち、中国との関係改善を強く訴えた。

 デモの主催者の一人は「(与党・民進党は)どうしたら主張を守りながら緊張関係を緩和し、共に発展できるか。方法を探し出し、中国と協議するべきです」と話す。

 台湾の現状に対し、中国は「『一つの中国』を認めなければ、問題は解決しない」という立場を強調、当局間の対話を閉ざしている。

 今後、台湾をどう導くのか。蔡総統は今月10日、新たな打開策を示した。

 蔡総統「東南アジア、南アジア、オーストラリア、ニュージーランドなどと互恵な連携関係を強める」

 中国依存ではなく、そのほかの国々との関係を強化していく考えを明かした。

 しかし、周辺国の中には既に中国と協調関係にある国も多く、未知数な部分もある。

 最新の調査では支持率が下がり始めている蔡英文政権。特に経済問題については、有効な手を打てなければ、求心力の低下を招く恐れも出てきている。

 強まる中国の圧力と向き合いながら、台湾経済に新たな活力をもたらす事ができるのか。新政権には慎重なかじ取りが求められている。