佐藤和孝氏、モスルへ 奪還作戦の最前線
過激派組織「イスラム国」のイラクでの最大拠点・モスルの奪還作戦が続いている。イラク軍は「一部を制圧した」と発表したが、「イスラム国」側は徹底抗戦を続けている。ジャーナリストの佐藤和孝氏が、激しい戦闘が続く現場に入った。
佐藤氏が向かったのは「イスラム国」が支配するイラク第2の都市・モスル。100万人以上の住民がいるとされるイラク北部のモスルは「イスラム国」にとって、イラクでの最後の主要拠点だ。
イラク軍やクルド人部隊、シーア派民兵組織が奪還作戦を展開しており、先月23日にはイラク軍が「完全に包囲し、孤立させた」と発表している。
市内東部の一部地域はイラク軍の特殊部隊が制圧。佐藤氏はその最前線に入った。
車での移動中、白旗を持って逃げている人たちとすれ違った。
逃げてきた女性「迫撃砲がどんどん撃ち込まれました」
Q「(逃げ出したのは)20家族くらいですか?」
女性「そうです」
イラク軍の特殊部隊が拠点とする最前線は建物の屋上にある。そこでの取材中、銃声が響く。「イスラム国」の支配地域に激しい銃撃を加えていた。中にはロケットランチャーを撃つ兵士も…。
また、路上を歩くと、そこには「イスラム国」兵士の遺体が見られた。モスル奪還作戦で「イスラム国」から解放された地域には、支配の傷跡が残されていた。
■首を切り落とされたマリア像
次に佐藤氏が訪れたのは、モスルから約20キロ離れた町・カラムレス。この町には「イスラム国」とは異なるキリスト教を信仰している人たちが多く住んでいる。
破壊し尽くされていた教会にやってきた佐藤氏が注目したのは、マリア像。
佐藤氏「全部ここ(首)を落としてるね」
教会にあるマリア像は、首から上が切り落とされていたのだ。
神父に話を聞いた。
佐藤氏「(原因)は宗教?」
神父「宗教です。私たちはキリスト教徒なので迫害されました」
■1か月半燃え続ける油田
モスルの南約60キロの場所にあるガイヤーラ。ここで佐藤氏の目に飛び込んできたのは、空を覆う黒煙。この影響で、午後2時頃にもかかわらず、夕方のような暗さだ。
原因は激しく燃え上がる油田。「イスラム国」が撤退する時に火をつけたという。周囲には原油とみられる液体が流れ出している。炎に立ち向かっての消火作業が行われているが、約1か月半、消し止めることができずに燃え続けているという。
■ピースサインと笑顔
「イスラム国」から4日前に解放されたモスル市内のある地区にやってきた。子どもたちから歓迎を受けるイラク軍の司令官。イラク軍が制圧した地区では、子どもたちのピースサインと笑顔があふれていた。
一方でモスルは深刻な食糧不足で、配給を求めて多くの住民が集まっていた。
住民を「人間の盾」にして徹底抗戦する「イスラム国」。モスル奪還作戦は長期化の様相を呈している。