破壊された街“アレッポ”に生きる人々
中東・シリアで内戦が始まって、今月でまる6年。その最大の激戦地・アレッポに今週、NNNの取材班が入った。そこで見たのは、内戦の悲惨な現実――破壊し尽くされた街と、なおもそこで生きようとする人々の姿があった。
■果てしなく破壊された街
シリア内戦の最大の激戦地・アレッポ。目の前には破壊された街並みが果てしなく続く。
シリア内戦は、2011年から始まった。アサド大統領率いる政権側をロシアなどが支援し、大統領の退陣を求める反体制派をアメリカなどが支援した。過激派組織「イスラム国」も加わり戦いは泥沼化。こうした中、アレッポでは去年12月、政権側がアレッポ全域を制圧した。
政権側と反体制派が向き合う前線となった旧市街は、特に激しく破壊されていた。世界文化遺産に登録され、内戦前には観光客も多かった地区では、以前、豊かな水をたたえていた噴水は枯れてしまい、無残な姿になっていた。古代の面影をとどめてきた市場もあちこちが壊れ、がれきが散乱していた。
市民の心のより所だったモスクも破壊され、反体制派の勢力が拠点として使っていた。
■水も電気も止まり…
アレッポ市内では激しい戦闘は収まったが、周辺の地域ではいまも戦闘が続いていて、内戦終結の道筋は見えていない。シリア内戦では、数十万人が死亡し、約500万人が難民となって国外に逃れた。破壊し尽くされた街で、生活の再建は容易ではない。
古井戸から水をくみ上げていたのは、配管工のアハメドさんだ。戦闘終結後に自宅へ戻った。アレッポでは現在も全域で水道が止まり、電気も全く供給されていない。戦闘で家を破壊された兄弟の家族も、薄暗い一つ屋根の下に身を寄せている。
そして、問題はインフラだけではない。アハメドさんの親戚はこう話す。
「夫に仕事がなく(お金がないから)子供にかばんを買えないの」
アレッポ市は再建のための調査を始めたが、内戦が続く中で先行きは見通せない。
一方、こうした中でも少しだけ日常が戻りつつある場所があった。
訪れたのは、アレッポ旧市街にある小学校。先月、再開したばかりだという。教科書はまだないが、多くの子どもたちが熱心に授業を聞いていた。インタビューをすると、こう答えてくれた。
「ずっと家で学校が再開してほしいと思っていたから、とてもうれしいです」
■山本美香さん銃撃から4年半…現場は
そんなアレッポで、私たちがもう1つ訪れた場所があった。4年半前、ジャーナリストの山本美香さんが銃撃された場所だ。山本さんは、戦いの中でも懸命に生きる人々にカメラを向け続けた。しかし、政府軍と見られる部隊に銃撃され、命を落とした。
4年半たった現場の街並みは、当時とほとんど変わっていなかった。しかし、山本さんの命も奪った内戦は、まだ終わっていない。その上、次第に多くの国々が介入し、その構図はむしろ複雑になっている。
■内戦の影に“代理戦争”
街で目にしたのは、シリアのアサド大統領とロシアのプーチン大統領の看板。さらに、ロシア軍の兵士も多く配置されていた。ロシアやイランなどが政権側の後ろ盾に、そしてアメリカやトルコなどが反体制派を支援し、内戦はいわば世界の“代理戦争”の様相も呈している。
“世界の縮図”ともいわれるシリア内戦。破壊し尽くされた街の姿は、“戦争”のむなしさを静かに訴えかけている。