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あす香港行政長官選挙 民意と“ねじれ”も

2017年3月25日 18:54

 5年に一度の香港のトップ、行政長官を決める選挙が26日に行われる。市民に人気のない女性候補が、中国の支持を受けているとして有力視されており、投票権が無い市民の民意と中国の意向との「ねじれ」が際立つ事態となっている。

 24日、香港の中心部に支持率トップの曽俊華候補がやってきた。市民と積極的に「対話」する姿勢を打ち出して、若者を中心に支持を集めている。

 曽氏の支持者「必ず支持します。一番よい候補だと思う」

 曽俊華候補「香港社会は団結するどころかさらに分裂し、政府は市民の支持を得られない」

 今回の選挙には、林鄭月娥候補、曽候補、胡國興候補の3人が立候補しているが、曽候補の支持率は最も高く選挙の1週間前の模擬投票でも9割の支持を集めた。

 しかし、今回の選挙戦で優勢が伝えられているのは、林鄭月娥候補だ。なぜなのか…。

 林鄭月娥候補「政治改革や行政機構の改革を待たなくても、リーダーシップがあれば香港には多くのすばらしいことが起こる」

 20年前にイギリスから中国に返還されて以降も、「高度な自治」が認められている香港。しかし、行政長官選挙では一般市民に投票権はない。選挙では、議員や財界などの「団体」別に、1200人の選挙委員が選ばれる。この1200人が投票し、過半数を得た人が当選する仕組み。ただ、委員の多くは中国寄りの立場をとる「親中派」で、中国側の意向が反映されると言われている。林鄭候補は今回、“中国が唯一支持する候補”と報じられているため、当選が有力視されている。

 そのワケは、3年前に香港で、民主的な直接選挙を求める大規模なデモが起きた際、林鄭候補は政府代表としてデモ隊と交渉。その要求を拒否した事から、「中国に評価された」などと伝えられている。

 香港市民「若者は、彼女が全く香港のことを考えていないと思っている」

 討論会の最中にも林鄭候補に抗議する人たちがいた。このように市民からの不支持の声も根強い林鄭候補。それでも行政長官になれば、中国としては意向をより反映しやすくできる。

 「中国の意向」が及んでいるのは政治だけではない。香港の一部の小中学校が導入している「国民教育」の授業。中国の歴史などを教え、香港の若者たちに中国人である、という意識を持たせることが狙い。今年の7月から、全ての中学校で必修科目にする検討が再び始まっている。

 教頭「香港は中国の一部だということを生徒たちに伝えたい」

 さらに、中国の国旗の「正しい掲げ方」を広める「課外授業」を行う団体があり、すでに3000人の子供たちが、その授業を受けているという。

 参加した生徒「(活動を通して)香港の人が中国によりよく溶けこめると思う」

 今月行われた中国の国会にあたる「全人代」でも、李克強首相は「香港」を名指しして、中国の一部だと強調した。

 李克強首相「香港独立に前途はない」

 香港への「関与」を強める中国。市民の反発も根強い中、投票は26日、行われる。