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米TPP離脱 存在感強める“大国”の動向

2017年4月7日 15:56

 3月、南米・チリでTPP(環太平洋経済連携協定)参加国の閣僚会合が行われ、アメリカ以外の国が参加した。トランプ大統領のTPP離脱表明を受け、あの大国が各国で存在感を強めていた。松永新己記者が取材した。


■TPPに期待も…「残念ですね」

 訪れたのは、TPP参加国のひとつ、ニュージーランドの南島・クライストチャーチ近郊の牧場。日本などに向けてニュージーランドの牛肉などを輸出している日系企業の牧場だ。ここにいる牛は約1万4000頭で、良質な赤身肉で知られるアンガス牛など、日本で人気の牛が飼育されている。

 ニュージーランドから牛肉を日本へ輸出する際の関税は38.5%。TPPが発効されることで、この関税が下がると期待されていた。アンズコフーズ・グレインフェッドビーフの高橋セールスマネージャーはこう話す。

 「日本に売りたいというのは非常に強いですし、ニュージーランドのおいしい牛肉をお届けしたいという気持ちは非常に強いので、(TPPが発効されないのは)ちょっと残念ですね」


■「中国は絶好のチャンス」

 ことし1月、トランプ大統領は就任直後にTPPの離脱を宣言し、大統領令に署名。永久に離脱すると参加国に通告した。

 TPPには、アメリカや日本、ニュージーランドなど12か国が参加していた。TPPは経済規模の最も大きなアメリカが参加しないと発効できない仕組みになっており、トランプ大統領の離脱表明で発効は困難になった。

 この牧場の牛は、約6割が日本に向けて輸出されているが、今後、“ある国”への輸出量が伸びる可能性があるという。アンズコフーズのグラァム・ハリソン会長はこう語る。

 「日本を含む多くの市場で保護されている乳製品と牛肉業界に関して、牛肉に関税をかけていない中国は絶好のチャンスです」

 中国は2008年にニュージーランドと自由貿易協定を締結しており、活発に貿易が行われている。

 ニュージーランドの最大都市・オークランドに展開するアジア系のスーパーでは、中国から多くの製品を輸入しているという。ニュージーランドでは中国が輸出入ともに、隣国オーストラリアに次ぐ第2位の貿易相手国となっている。


■“新たな枠組み”で存在感

 中国は、TPP参加国の多くと自由貿易協定を結んでいる。ことし1月、政財界のリーダーが集まるダボス会議の演説で、習近平国家主席は自国の産業を保護するため輸入品に高い関税をかけるなどと主張するトランプ大統領をけん制した。

 「保護主義に断固反対する旗を掲げる。保護主義は真っ暗な部屋に閉じこもるようなものだ」

 また、中国はTPP参加国に対して、存在感を強める動きも見せている。

 先月には、李克強首相がオーストラリアとニュージーランドを相次いで訪問し、両国首脳との会談では自由貿易を促進することなどで一致した。

 また、先月行われたTPPの今後について話し合う閣僚会合でペルーなどが関心を示したのも、中国を加えた“新たな枠組み”だった。

 トランプ大統領の離脱表明で暗礁に乗り上げているTPP。その中で、新たな枠組みで主導権を得ようとする中国が攻勢を強めている。