“成功モデル”韓国 外国人労働者の現状
日本では今月、改正出入国管理法が成立し、外国人労働者の受け入れ拡大が進められる見通し。こうした中、日本より一足早く外国人労働者を本格的に受け入れ、成功モデルと言われる韓国を取材した。
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■少子高齢化…14年前に外国人労働者受け入れ制度導入
今月初め、ソウルで開かれた韓国の国技「テコンドー」の教室。参加しているのは全員、韓国で働く外国人だ。
韓国で働くバングラデシュ人「健康な体じゃないと、仕事を続けることができません。テコンドーの練習をすると体にもいいし、気持ちがいい」
このテコンドー教室は、韓国社会になじんでもらうため、国が無料で行っている支援プログラムの一環。
日本と同じく少子高齢化の問題を抱える韓国。製造業や農業など担い手が不足している現場に外国人労働者を受け入れる制度を、14年前に導入した。現在、アジアの16か国と協定を結び、この制度のもと、約28万人の外国人が韓国国内で働いている。
■“韓国人と同待遇”受け入れは国が一括管理
韓国・密陽にある自動車部品工場を訪ねると、80人の従業員のうち、30人ほどが外国人だった。韓国人との間に待遇の差はなく、収入は月に25万円から30万円ほどで、中には、母国で得ていた月給の8倍という人もいる。
インドネシア人「韓国が大好きです。給料が高いので」
ベトナム人「稼いだお金はベトナムに送っています。ベトナムで溶接会社を設立したい」
韓国の制度の特徴は、外国人労働者の受け入れを国が一括して管理していること。外国人を雇うことができるのは国が許可した企業に限定し、悪質なブローカーが入り込む余地を排除している。また、韓国政府が毎年、国内の雇用情勢などに応じて受け入れる外国人労働者の数を決めている。
韓国外国人労働者支援センター イ・ゴン課長「外国人の権利を保障し、(自国民と)同等に扱う、そのような制度は(世界でも)あまりないと思う」
■成功モデルとして高評価…一方で課題も
国際的にも高く評価されている韓国の外国人労働者受け入れ制度。それでも…。
支援団体の相談員「深夜手当が支給されていないことについて、私たちが(会社に)電話しました。会社からは『確認して連絡する』と言われたが、まだ来ていないので、私たちが(深夜手当を)計算してみました」
ソウル郊外にある外国人労働者のための民間支援団体を訪れた2人のタイ人労働者は、深夜手当が月に1万円ほど支給されていないことが分かり、団体を通じて、会社側に事実関係を確認している。
タイ人労働者「(ここは)とても温かく感じます。相談に乗ってくれたり、いろいろ助けてもらったりしています」
この団体は、タイとベトナムの労働者を対象に、無料で相談に応じていて、裁判になった場合などは同行支援も行っている。相談者の数は年間で約3000人に上る。
民間支援団体 ハン・ユンス所長「一番大事なのは、外国人の手を握って、一つ一つ最後まで解決してあげること」
また、外国人労働者がビザの有効期限が切れた後も韓国に不法にとどまるケースが毎月、新たに数百人規模で発生していて、対策を求める声が上がっている。
日本より一足早く本格的に外国人労働者を受け入れ、成功モデルとされる韓国だが、課題も多く残されている。