北朝鮮・金総書記の指導を“ながら聞き”ナゼ許された? 映像が捉えた“側近女性”絶大権限の証
北朝鮮の国営テレビが報じた、金正恩総書記の“側近”ともされる女性の「ある行動」に、にわかに注目されています。絶大な権限を与えられる“証”とも言える、女性がとった「ある行動」とは──?
こちらは北朝鮮の国営テレビが6日放送した、金正恩総書記による視察映像の一部です。
金総書記は首都・平壌に新たに建設されている1万世帯分の住宅地を視察。住宅地が完工間近となっていることに喜びを示すとともに、建設過程で見られた欠点を指摘し、「仕上げまで完璧に終えなければならない」と強調したと報じられています。
北朝鮮の指導部が国民生活の向上に寄り添っている姿勢をアピールしているともとれる、北朝鮮メディアではよく見られる報道です。しかし、この放送の「ある場面」に韓国メディアが色めき立っています。
それは、こちら。
金総書記が何かを指し示しながら力説。まわりの関係者は、皆が一斉に、金総書記が指でさした方向を凝視しているのがわかります。ただ、一人だけをのぞいては…。
画面の真ん中をよく見ると、ひとりの女性だけが違った行動を。携帯電話を操作しながら歩いていて、いわば「歩きスマホ」の状態なのです。
“最高指導者が絶対”とされる北朝鮮で、金総書記を前にこの女性だけが、顔すら上げてもいません。さらには「歩きスマホ」で最高指導者の指示も“ながら聞き”していることに、いま一部の韓国メディアが注目しています。
いったい、この女性は誰なのか。
女性の名は、玄松月氏。2018年に開催された平昌五輪の際には、三池淵楽団の団長として“応援団”を率いて韓国を訪問し、“時の人”となったこともあります。
その後も、北朝鮮で金総書記が出席する重要イベントの多くを指揮するような振る舞いが見られ、イベント=儀典を担当する金総書記の“側近”の一人とされています。
しかし、側近といえど、なぜ最高指導者の話を“ながら聞き”することが許されているのでしょうか。
地元メディアは、北朝鮮の元外交官で、脱北したのち韓国統一省の要職についている高英煥氏の分析として、玄氏には“絶大”ともいえる権限が与えられていることが、その背景にあると伝えています。
北朝鮮では金総書記が姿を見せる行事は「1号行事」と呼ばれていますが、高英煥氏は「“1号行事”が行われるタイミングには、玄松月氏がすべてを左右することができる」と解説。その上で、「金総書記への報告内容や急な連絡事項が玄松月氏を通じて伝達される」と分析しています。
つまり、くだんの場面では、金総書記への重要な報告ないし連絡がやりとりされていた可能性があり、それが故に“ながら聞き”も許されていたのでは、というわけです。
高英煥氏は“状況が状況だけに許された振る舞い”との見方を示しながらも「(玄氏の)権限がすごい。金総書記の視察現場にあっても行動に全く制約を受けないほどとは、かなりの権力だ」と言及。
普段はベールに包まれた、北朝鮮の最高指導者をとりまくパワーバランスが、垣間見えた瞬間かもしれません。