ウクライナ軍「不意打ち」成功で――領土“東京の1.4倍”を電撃奪還 ハルキウで何が?「ロシアの目標は風前の灯火」の見方も
ウクライナ軍が、ロシア軍に支配されていた北東部ハルキウ州の要衝を奪還したと発表しました。ウクライナ軍はこの数か月、南部に力を入れてきましたが、北東部では一進一退を繰り返していました。今回の奪還の背景には、ある作戦の成功がありました。
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■喜ぶ住民の姿...ハルキウ州で「奪還」
有働由美子キャスター
「ロシアの侵攻が続くウクライナから届いた映像では、ウクライナの兵士と住民の皆さんが一緒に喜んでいる様子が映っています。国旗を持って抱き合っている人もいます。何が起きているのでしょうか」
「ロシア軍が支配していた北東部ハルキウ州でウクライナ軍が反撃に出て、東京都の1.4倍ほどとされる広い範囲を取り戻したと、ウクライナ側が発表しました。この辺り、ずっと一進一退だったように思いますが、一気に取り返せたのはなぜでしょうか」
■クリミアの基地も攻撃...関心を南部に
小野高弘・日本テレビ解説委員
「ウクライナの作戦勝ちです。不意打ちをしました。ウクライナ軍がこの数か月、取り戻す、力を入れると言っていたのは南部でした。実際に多くの兵力を集めて、クリミアのロシア軍基地にも攻撃しました」
「するとロシア軍も、対応する必要が出てきます。やはり強力な部隊を南部に集めてきました。それにより、ロシア軍が北東部で手薄になった。その隙を突いてウクライナが一気に攻め入って領土を取り戻した。南部に関心を引きつけておいて、北東部を攻めました」
■高橋室長「主戦場は南部と判断」
有働キャスター
「作戦がうまくいったということだと思いますが、ロシア側がまんまと引っかかるものでしょうか?」
小野委員
「乗せられたようです。現代軍事戦略に詳しい、防衛省・防衛研究所の高橋杉雄室長は『ロシア軍も全域に力を注ぐわけにはいかず、今の主戦場は南部だと判断せざるを得なかったのだろう。一度判断した以上は南部に兵力を集めることになります』と話しています」
「ロシアが失ったものは大きいです。(東部)ドネツク州に進軍しようとしています。その拠点がハルキウ州にあるイジュームなどです。拠点を失うと戦車を動かせないので、『ドネツク州全域を支配しようというロシアの目標は風前の灯火では』との見方もあります」
■ロシアは諦める?反撃の可能性は
有働キャスター
「ウクライナの住民の皆さんにしてみると、ようやく解放されたということですよね」
小野委員
「集落も破壊されていますが、地元メディアによると、ハルキウ州の地域によっては3か月も自宅の地下室に隠れていた人もいます。『ずっと恐怖だった』『今もロシア軍がまた戻ってこないかと心配です』と話しているそうです」
「高橋室長によると、ロシア軍が戻ってくるという心配はあります。『ロシアが素直に諦めるとも思えない。ロシア軍が反撃に出ないか、1~2週間は慎重に見る必要があるでしょう』と指摘しています」
有働キャスター
「8月にウクライナで取材した時、『世界の関心が薄れた時が、ロシアが有利になる時だ』と多くの方が話していました。日本にいても、1人1人が関心を持つこと自体が、戦況にも影響しています。私たちも引き続きお伝えしますし、心に留めていただければと思います」
(9月12日『news zero』より)