バイデン氏コロナ感染“マスクなし”笑顔で執務の写真・動画を公開 ホワイトハウス“健在ぶり”積極発信のワケ
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一目で違和感を覚える写真だった。ホワイトハウスが21日朝、バイデン大統領の新型コロナ感染を発表してから、わずか2時間足らず、バイデン氏は自身のツイッターにマスクを外して笑顔で電話をかける姿を公開した。
写真は専属カメラマンが数メートルの距離で撮影したとみられる。なぜこのような写真を公開したのか。
ことし4月までホワイトハウス報道官を務めた側近のジェン・サキ氏は、こう解説した。「おそらくここ数か月、ホワイトハウスはこの時のために準備してきた」「今後数日間、ホワイトハウスがすべきことは、バイデン氏が大統領として執務を続けている姿を見せることだ」と。
健在ぶりをアピールする必要があり、そのための準備もホワイトハウスは周到に行ってきたというのだ。
実際、マスクなし笑顔の姿を公開したバイデン氏のツイートでは「私は元気だ」「忙しい!」などのメッセージがつづられている。
“健在アピール”はこれにとどまらない。写真公開からさらに1時間半後、今度はバイデン氏が「21秒間の動画」を公開した。
ホワイトハウスのベランダに立ち「症状は軽い」「私は元気で多くの仕事をこなしていて、これからも続けていく」「大丈夫」だとカメラに語りかけている。これもマスクなし。カメラとの距離は最初の写真よりもっと近い。
ホワイトハウスの担当医は、バイデン氏の診断書を公表し、鼻水やけん怠感、時折乾いた咳が出るものの「症状は軽い」としている。
またホワイトハウスは、急きょ記者会見を設定し、ジャンピエール報道官に加えて、政権の新型コロナ対策を統括するジャー調整官を同席させた。
ジャー氏は、会見冒頭から「大統領は朝食を食べ終えないくらい、朝から仕事をしている。召し上がるようにこちらが促した」とわざわざ強調した。
一方、会見では「マスクなし動画」について記者から質問が飛んだ。「撮影者の予防措置は?」との問いに、ジャンピエール報道官は、「(高性能の)N95マスクをして、6フィート(約1.8メートル)の適切な距離を取っていた」と説明した。
大統領がマスクを外して撮影を行ったことについては、「アメリカ国民にできるだけ直接姿を見て欲しかったからだ」とした。
バイデン氏がマスクを外してまで意識する「国民の目」。実は感染が判明する前日、気になる世論調査の結果が発表されている。キニピアック大学が今月14日から18日に米国内の成人に行った調査で、バイデン大統領の支持率は31%だった。不支持は60%に上る。
各種世論調査の平均支持率をまとめたリアル・クリア・ポリティクスでも下落傾向が続いていて、支持と不支持の差は20%を超えている。
またキニピアック大学の調査では、バイデン氏の2024年の大統領選への出馬について「望まない人」は71%、トランプ前大統領の64%を大きく上回った。
激しいインフレへの不満に加え、79歳バイデン氏の高齢への懸念が根強いことも背景にあるとみられる。
11月の中間選挙を経て、2024年の大統領選に向けた動きもいよいよ活発化する。
バイデン氏は2期目を狙うファイティングポーズは崩していないが「トランプ氏が出馬を見送れば、バイデン氏も出ないだろう」との見方が強い。
ワシントンポストは、トランプ氏が今年9月の出馬表明も視野に入れ、検討を進めているとも伝えている。
11月に80歳を迎えるバイデン氏。今回の感染で、ホワイトハウスが健康不安説にいっそう神経をとがらせていることも浮き彫りとなった。