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“数十万人が飲料水ないまま放置” 被害の全容はいまだ見えず…ウクライナ・ダム決壊

2023年6月8日 6:06

ウクライナ南部のダムの決壊により、周辺では広範囲に浸水し住民たちが避難を強いられています。ウクライナ側、ロシア側がともに“相手による攻撃”との主張を続ける中、被害の全容はいまだ見えていません。

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ウクライナ・ヘルソン州で浸水した室内を捉えた映像では、水は天井に迫るほどの高さに達しています。「家が完全に沈んでしまいました」と話すように、ありとあらゆるものが水没。わずかな隙間から男性と犬が脱出しました。

ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカダムで発生した決壊により、周辺地域の住宅街に大量の水が流れ込む事態になっています。ウクライナ側は、約4万2000人が洪水の危機にさらされているとしています。

ロイター通信によると、ロシアのプーチン大統領は7日、ダム決壊について初めて公に言及し、「環境と人道上の大惨事だ」と述べたということです。

浸水地域に住む人の日常は、一変しました。

地元当局がゴムボートで取り残された人の救助にあたり、次々と住民たちが助け出されました。中には、浸水した街を歩く女性もいました。妊娠中の飼い犬が行方不明だといい、「ムーリャ! ムーリャ! どこに行ってしまったの」と呼びかけていました。

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人々の暮らしに大きな影響を与えているダム決壊。被害の全容はまだ見えません。

ロシアメディアがダム決壊後に報じた6日時点の浸水予測エリアでは、決壊前と比べてドニプロ川の原形がわからなくなるほど、広い範囲に及んでいます。

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は、「多数の死者が出ている可能性がある」との見方を示しました。

また、ゼレンスキー大統領は自身のSNSで“数十万人が飲料水を手に入れられないまま、放置されている”と明らかにしました。ウクライナ内務省によると、ロシアの占領下にある10か所を含む29の集落が浸水したということです。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、6日に公開した動画で「このような大規模な環境破壊の犯行は、単にダムを砲撃しただけでは起こり得ない。ダムを破壊するためには、ロシア軍の意図的な行動なくしては起こり得ない」と主張しました。

改めてロシアを強く非難したゼレンスキー大統領に対し、ロシアのショイグ国防相は6日、「夜間、ウクライナは新たなテロ犯罪を犯した。カホフカダムが爆破されたのだ」と主張。そして、ダムの決壊は、「ウクライナ側の反転攻勢の始まり」だと述べました。

各地で軍事侵攻が続く中、今回の一件でウクライナの反転攻勢に影響はあるのか、ウクライナ情勢に詳しい専門家に聞きました。

慶応義塾大学 廣瀬陽子教授
「1日、2日で済まない今回の被害は大きな戦況への影響を与えていくと思うし、ウクライナの南部における計画が後ろにずれることは間違いないと思う。そもそも春からずっと『反転攻勢する』と言っていて、スタートが遅れているのも事実。となれば、これ以上遅れるのはウクライナにとっても決してプラスではないと思うので、より早い修正を図っていくのではないか」

(6月7日放送『news zero』より)