【解説】南海トラフ臨時情報「巨大地震警戒」1週間の事前避難とは
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5月13日から19日までの期間、国内では震度1以上の地震が26回ありました。
▼15日午前2時49分ごろ、石川県志賀町で震度3の地震がありました。震源は能登半島沖で地震の規模を示すマグニチュードは2.9、震源の深さは3キロでした。
▼18日午前9時55分ごろ、茨城県鹿嶋市、千葉県香取市などで震度3の地震がありました。震源は茨城県沖、マグニチュードは4.5、震源の深さは15キロでした。
▼19日午前0時46分ごろ、福島県楢葉町と大熊町で震度3を観測する地震がありました。震源は福島県沖で、マグニチュードは4.5、震源の深さは40キロでした。(速報値)
南海トラフ地震臨時情報は想定震源域やその周辺で大きな地震や異常な現象が観測された時に発表されます。
▼想定震源域内のプレート境界でモーメントマグニチュード(Mw)8以上の地震が発生
▼想定震源域とその周辺でモーメントマグニチュード7以上の地震が発生
▼短期間に、プレート境界の固着状態が明らかに変化しているような通常とは異なるスロースリップが観測
※「モーメントマグニチュード(Mw)」とはマグニチュードの指標のひとつ
想定震源域やその周辺で気象庁マグニチュード(Mj)6.8以上の地震が発生した時などに開かれる専門家らによる緊急の評価検討会で“先ほど発生した地震は想定震源域内のプレート境界でおきたモーメントマグニチュード8以上の地震”とされた場合、「南海トラフ臨時情報 巨大地震警戒」という情報が発表されます。
「臨時情報 巨大地震警戒」は過去、南海トラフで発生した地震から、もし、想定震源域の東側でモーメントマグニチュード8以上の地震がおきた場合、地震がおきていない西側でも、あとから連動して大規模地震がおきる可能性が平常時と比べて相対的に高まっていることを伝える情報です。先に西側で地震がおきた時も同様です。
「臨時情報 巨大地震警戒」が発表された時に、私たちがとるべき主な防災対応はふたつあります。
▼1週間の事前避難
▼日頃からの地震への備えを再確認
もし、次に大規模地震がおきた時に、すぐに避難することが難しい地域の住民は1週間、安全な場所に避難してほしいとして国は呼びかけています。
国は、事前避難の対象地域について、地震発生から30分以内に津波によって30センチ以上の浸水が生じる地域を「津波避難対策特別強化地域」に指定しています。ただ、指定されたすべての地域が事前避難の対象ということではありません。事前避難対象地域は、「次にくるかもしれない地震に伴う津波に備えて、事前に避難することによって、より安全性を高めることができる地域」のことで、地域の実情に応じて市町村が設定します。
さらに、市町村によっては、避難に時間のかかる高齢者などを対象に事前避難を求めるところもあるため、自分の住む地域が事前避難の対象となっているのか、どんな人が対象なのか、事前に確認しておく必要があります。
そして、なぜ1週間なのか?これは、南海トラフ地震のメカニズムや活動状況とは関係はなく、科学的根拠によるものではありません。"住民が避難を続けられる限界"として国が定めた期間です。
■1週間経過後も地震発生の可能性が低くなったわけではない
「臨時情報 巨大地震警戒」の情報が出たときに注意してほしいことは
▼1週間が経過したあと、大規模地震発生の可能性が低くなったわけではない
▼臨時情報が発表された時には、すでに大きな地震が発生している可能性が高く、その地震による強い揺れや津波から命を守ることが最優先
地震が発生した時、まずは、大きな揺れや津波から、自分の身の安全を守り、事前避難対象地域や浸水想定区域に住んでいる人は、津波警報が注意報に切り替わったあとに、浸水想定区域「外」の安全な場所に移動して、1週間の事前避難をしてほしいと国は呼びかけています。
臨時情報は、“大きな地震がおきたあと別の大きな地震がおきる”と予測する情報ではありません。臨時情報が出ても、その後、南海トラフで大きな地震がおきない可能性もあります。また過去には数年後に大きな地震がおきたこともあることから、時間をおいておきるおそれもあります。
南海トラフに限らず、日本国内ではいつどこで地震がおきるかわからないため、日頃からの備えが重要です。