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北京五輪開会式の舞台裏見た”こぢんまり”の裏に狙いは

2022年2月5日 16:26
北京五輪開会式の舞台裏見た”こぢんまり”の裏に狙いは
開会式に向かうバスで赤マスクが配られた

シンプル、簡素をうたった北京オリンピックの開会式。しかし、実際に会場で見守ると、計算しつくされた「政治的演出」も垣間見えた。台湾、ウイグル、そしてロシアとの蜜月…。"こぢんまり"演出の裏に隠された狙いとは。(NNN中国総局・富田徹)

■記者に「赤いマスク」配布…周到な準備

開会式当日の4日、中国側の許可を受けて会場に入ることになった。ただ中国側は「撮影機材の持ち込みは禁止、観客としての招待だ」という。スマホだけは持参を許された。まず感じたのは、「周到に準備されていた」という印象だ。

たとえば今回、チケットの扱いは、新型コロナウイルスの感染対策を理由に、わずか2週間前に「一般販売はしない」と発表されたばかりだが、当日私たちが渡されたチケットには偽造防止のホログラムやQRコードもしっかり印刷されていた。かなり前から、一般販売の断念を視野に入れていたようにも見える。

また、集合場所から開会式の会場までの道中で配られたマスクは「赤」と「青」の2種類。いざ会場に入ってみると、集まっていたほぼ全員が、この赤か青のどちらかのマスクをしていた。これも会場の一体感を演出するためのツールであり、我々海外メディアの記者も「演出の一環」と捉えられていることがよく分かった。

そして肝心の開会式の演出で狙ったのは、「シンプルでつつましい演出」だった。クライマックスである聖火の点灯はトーチを差し込むだけで、観客席からは炎が見えるか見えないか程度のものだった。

過去のど派手な演出に比べると落ち着いた印象で、中国メディアによると今回使われた花火の量は2008年夏の北京五輪の10分の1だという。

筆者は去年6月、通称“鳥の巣”と呼ばれる同じ会場で中国共産党創立100周年を記念するイベントも取材したが、その際の“ギラギラこてこてぶり”とは大きく異なっていた。これも、国際社会に「中国は過剰な演出はしない“成熟した国”だ」とのアピールとみられる。

■台湾めぐる"政治臭"…モニターには見守る習近平主席

演目の中では可能な限り薄められていた“政治”の色が垣間見えたのは各国の選手入場。例えば台湾選手団の入場シーンだ。

台湾の選手団は近年のオリンピックで、「中華台北」とアナウンスされてきた。ところが今回は、中国が「中国台北」に切り替え、「中国の一部である台湾」というニュアンスを強調するのではとの懸念が事前から浮上し、台湾は一時、開会式への不参加を表明。

しかし結局、台湾はIOC(国際オリンピック委員会)に促されて開会式に出席。

会場では従来通り「中華台北」とアナウンスされたが、中国の国営テレビは中継で「中国台北」と紹介した。外向きには台湾の開会式出席を取り付け、内向けには強腰を見せる2つの顔を使い分けていた。

さらに台湾や香港の選手団が入場する際には、これを指導者として見守るかのように習近平国家主席の姿が大モニターに映し出され、中国国内の組織や団体からの招待客で占められた会場からは、あらかじめ決められていたかのような大歓声が上がった。

アメリカを始め他の国々の入場では静かだったが、ロシアから来た選手団が入場した際にも大きな歓声があがった。

アメリカやヨーロッパとの関係が悪化し、“孤立”を深める両国が、蜜月関係を国内外にアピールした形だ。

■最終ランナーは「テニス選手」ではなく「ウイグル族」

式のクライマックスにもポイントがあった。聖火台に火をともす最後の聖火ランナーだ。

一部では中国の副首相から性的関係を強要されたとされるテニス選手の彭帥さんが務めるのでは、との憶測も出ていたため、観客席から緊張して見守っていたが、さすがにそこまであからさまな演出はなかった。

実際の最終走者は中国政府による人権弾圧が指摘されているウイグル族のアスリートが務めた。

中国政府にとっては、アメリカなどが「外交的ボイコット」に踏み切る中、批判をかわしつつ“民族融和”を強調する狙いがあったとみられる。

オリンピックをめぐり中国政府はここ数か月、「スポーツの政治問題化に反対する」を常套句としてきたが、開会式の演出の通底に流れていたのも「政治の旋律」。ここからはアスリートたちの熱戦を楽しみたい。