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“暗殺未遂”のスロバキア首相、プーチン氏との関係は? 「権威主義」で社会が不安定に…71歳男の動機は【#みんなのギモン】

2024年5月17日 9:33
“暗殺未遂”のスロバキア首相、プーチン氏との関係は? 「権威主義」で社会が不安定に…71歳男の動機は【#みんなのギモン】
スロバキアの首相が、71 歳の男に至近距離で銃撃される暗殺未遂事件が起きました。容疑者の動機には政治姿勢があるとの見方もあります。首相はロシア寄りのリーダーとして知られ、専門家によると権威主義を推し進めてきたことで社会が不安定化していました。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「スロバキアで首相“暗殺未遂”」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●撃ったのは71歳 現場で何が?
●プーチン大統領との関係は?

■どんな状況で?…銃撃の瞬間の映像

小野高弘・日本テレビ解説委員
「大変な事件が起きてしまいました。15日、東欧のスロバキアのフィツォ首相が銃撃されたというニュースが世界を駆け巡りました。この首相はもともと“ロシア寄り”と言われてきました。そんな首相の政治姿勢と関係はあるのかどうか」

「何が起きたのか。その瞬間の映像が残されていました。首相は支持者らが集まっているところに歩み寄った際に、男に銃で撃たれました。銃弾のうち1発は腹部を貫通したということです。銃撃したのは71歳の男で、その場で逮捕されました」

「スロバキアの内相は『政治的な動機で行われた疑いがある』という見方を示しています」

森圭介アナウンサー
「映像を見る限りでは SP も近くにいて、白昼堂々、あれほど近い距離で発砲するのはにわかに信じがたい光景ですね」

■支持者を装い、隙をうかがって発砲か

小野解説委員
「どんな状況で銃撃が起きたのか、映像を拡大して確認します。鉄の柵の向こう側に、白っぽい服を着た容疑者とみられる男がいます。そして銃が映っていて、向けられている先にフィツォ首相が。首相は柵の反対側の道路の方にいた様子が分かります」

「これだけの至近距離から撃っています。銃が向けられた瞬間、首相を警護するSPもまだ反応していない様子です。支持者を装って紛れ、隙をうかがって突然銃を出し、首相に発砲したとみられます。映像から聞こえた銃声は5発でした」

「この場所は首都から約150キロ離れた中部のハンドロバで、政府の閣議が行われていた建物の前です。首相が閣議を終えて出てきたところを狙って暗殺未遂事件が起きたということです」

桐谷美玲キャスター
「かなり近い距離から撃たれたということなんですが、首相の容体はどうなんですか?」

小野解説委員
「当初は『極めて深刻な状態にある』と伝えられていましたが、スロバキアの副首相は『手術はうまくいき、命に別条はない』と欧米メディアに明らかにしています。命の危機は脱し、状態は安定したそうです」

■息子「合法的に登録した銃を所有」

鈴江奈々アナウンサー
「容体が安定したと聞いて少しだけほっとしました。政治的な動機で行われた疑いがあるということでしたが、男に関する情報は何か入ってきているのでしょうか?」

小野解説委員
「容疑者の71歳の男はどんな人物か。現地メディアなどの報道によると作家で、スロバキア作家協会の会員だといいます。ただ、あくまで自称作家だと伝えている現地メディアもあり、数多くの本を書いている作家のイメージとは異なるかもしれません」

「3冊の詩集を出し、アマチュアの詩人だったという報道もあります。詳しい動機は明らかになっていませんが、『男が反政府系のデモに参加していた』という報道もあります」

「容疑者の息子は現地メディアに『(父親は)合法的に登録した銃を所有していた』と話したそうです。まだまだ分からない点が多いです」

■世界遺産の古城、ワイン…どんな国?

小野解説委員
「スロバキアという国、どんなイメージがありますか?」

桐谷キャスター
「国の名前は聞いたことはあるんですが、詳しいことはちょっと分からないですね」

小野解説委員
「日本人にとってはちょっとなじみがないかもしれませんが、名産品があります。2000年以上の歴史があるというのがワインです。2013 年に秋篠宮ご夫妻が訪問した際に視察されたのが、世界遺産のスピシュ城という古い城です。どこかで見た気がしませんか?」

忽滑谷こころアナウンサー
「ポストカードになりそうな、映画に出てきそうな美しいお城ですが…」

小野解説委員
「ジブリの『天空の城ラピュタ』に似ている、とも言われています。モデルになったかどうかは分かりませんが…」

■羽根田選手が武者修行…カヌー強豪国

小野解説委員
「日本人にとってちょっと身近なのはカヌーです。スロバキアはカヌーの世界的な強豪国として知られています」

「カヌー日本代表の羽根田卓也選手は高校を卒業してすぐスロバキアに単身で渡り、武者修行していました。リオオリンピックではカヌー競技でアジア人初となる銅メダルを獲得。羽根田選手はスロバキアの首都の国立大学院を修了したという経歴も持っています」

森アナウンサー
「私も羽根田選手を取材したことがあります。スロバキアが強豪国なので、本場に行かないとなかなか本格的な設備も整っていない、強豪と戦うことで自分を磨くことができるとおっしゃっていました」

「ただ言葉もしゃべれない状態から単身スロバキアに行って苦労されたという話もしていたので、本当に大変だったんだろうなと思います」

■親ロシア、プーチン寄りのリーダー

小野解説委員
「スロバキアはヨーロッパの真ん中に位置し、面積は日本の7分の1ほど。人口は約540万人。昔はチェコスロバキアと言われていましたが、1993年にチェコとスロバキアに分かれました」

「ウクライナと国境を接し、民族的にはロシアと同じスラブ系の人が多く、ロシアにシンパシーを持っている親ロシアの住民も多いといいます」

「銃撃されたフィツォ首相は 59 歳。親ロシア、プーチン寄りのリーダーとして知られていました」

「スロバキアは EU(ヨーロッパ連合)と NATO のメンバーではありますが、ロシアによるウクライナ侵攻後には『ウクライナのナチスとファシストがプーチンを挑発して侵攻を開始させた』という発言をしていました」

「ウクライナの政権について『ナチス』と、プーチン大統領が使っていたのと同じ言葉を使い、プーチン政権に同情的な姿勢を見せていました。首相になる前に行われていたウクライナへの軍事支援も、首相になると去年、停止することを表明してしまいました」

「また、政府と対立する公共放送を『偏っている』として国営放送にしようとしています。スロバキアは汚職が多いそうですが、なぜか汚職に対する罰則の軽減を目指す司法制度改革を推し進めようとして物議をかもしています」

「とにかくやりたいことを強引に進めている印象で、政治手法が強権的、自分に権力を集中させようとしている、と見られています」

■「行き過ぎ」「自由阻まれる」世論も

鈴江アナウンサー
「フィツォ首相はウクライナ侵攻があった後に就任しているということで、国民の中でもウクライナへの軍事支援停止を支持している人も多いという背景も、もちろんあるということですか?」

小野解説委員
「そうですね。今回の容疑者の動機ですが、政治姿勢に関係があるのではという見方があります。慶応義塾大学の廣瀬陽子教授に聞きました」

「廣瀬教授によると、フィツォ首相は公共テレビ局をより厳しく政府の管理下に置こうとするなど、首相が強い権力を持つ『権威主義』に突き進んでいます」

「4月には首相に近い大統領も選出され、歯止めが効かなくなるという懸念から、国内では『行き過ぎだ』『自由が阻まれる』といった世論もあり、社会が不安定に。そうした中で起きた暗殺未遂事件なのではないか、ということです」

■EUの国ながら…首相は反EUの立場

森アナウンサー
「ウクライナ侵攻もロシアとEU・NATO側(の関係があり)、ウクライナがNATOに近づき、それを嫌がったロシアが侵攻したという見方もあります」

「スロバキアはEUとNATOのメンバーですが、親ロシア派の首相がいるわけですよね。(1つの)国で違う考え方が2 ある。どうバランスを取っているのですか?」

小野解説委員
「EUの国ですが、フィツォ首相は反 EU の立場だったわけです。スロバキアは特にロシアにものすごく気を遣っていて、ロシアからミグ戦闘機を買い続けてきたぐらいだと言われています」

「一方で最近では突然、『ロシアは国際法に違反している』と言うなど、どっちつかずの発言もあります。小さい国ですからバランス外交をやっていかないと持たない部分があるんじゃないか、と廣瀬教授も話していました」

鈴江アナウンサー
「どっちつかずに見えるのは、国内でそれぞれ、いろんな考え方の違いがあるという背景でもあると思います。どんな違いがあったとしても暴力で政治的なことを変えていくことはあってはならないですね」

小野解説委員
「71歳の容疑者にどんな動機があって、なぜ卑劣な犯行が行われたのか。背景の説明が待たれます」

(2024年5月16日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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