「中国海軍だ」…中国“海洋進出”の現場は 巨大巡視船でフィリピン漁船を妨害 南シナ海でも対立激化
中国軍は23日朝、台湾海峡や台湾北部・南部・東部に加え、金門島や馬祖島の周辺で軍事演習を開始したと発表しました。一方、中国は東南アジアのフィリピンの近くの海にも巨大な巡視船を派遣し、フィリピン側と海をめぐる争いが激化しています。その緊迫の現場を取材しました。
5月15日、南シナ海でフィリピンの漁船からNNNのカメラがとらえたのは、漁船に向かってくる中国海警局の船です。
「また向かってくるぞ。いつも現れるやつか?」
「追跡されている!」
急接近する中国船。威嚇するように向かってきました。
いま、南シナ海で何が起きているのか。
漁船が向かっていたのは、南シナ海のスカボロー礁です。中国とフィリピンが互いに領有権を主張し、対立が続く海域です。
中国側は自国の海だと強調するため、フィリピンの漁船や、時には、護衛にあたる沿岸警備艇をも威圧。放水砲を放ち、フィリピンの警備艇のガラスは粉々に…。
中国が圧力を強めるなか、漁師たちは昔ながらの漁場で漁ができなくなりました。
こうした事態に危機感を募らせた地元漁師らが船団を作り、5月15日、スカボロー礁を目指すことにしたのです。
出航前の港では…
田中純平記者 NNNサンバレス州
「木造なんですけど、20トンある船で、南シナ海で、4隻で航行するということです」
目的は、漁場に「この海は我々のもの」と書かれた“ブイ”を設置すること。沖合で、別の港から出港した100隻の小型漁船も合流し、港から約250キロ離れたスカボロー礁を目指しました。
しかし、出港から12時間後の夕暮れ時…
「中国海警だ。あれは、中国海警だ。中国、中国!」
船団の前に、中国海警局の船が現れました。
中国船は、威嚇するように至近距離まで迫ってきますが、漁船は航路を変えず、全速力で走り続けました。
翌16日朝、再び船影が…
「中国海警局の船が、こちらに向かっている」
すると、護衛にあたるフィリピンの沿岸警備隊が、間に割って入りました。
それでも、フィリピンの船団は活動のなか、領有権を主張する“ブイ”も設置。
すると、沖合には…
「中国軍艦だ!」
中国海軍まで登場。監視は、船団が引き返す動きを見せるまで執拗に続きました。
苦境に立たされる漁師たち。
地元漁師
「(中国の妨害行為について)心配しているよ。こわい。(スカボロー礁は)私たちの稼ぎ場だから。もちろん、収入に影響する」
さらに中国は、漁船への妨害行為以外にも、不審な動きを見せているといいます。
南シナ海、南沙諸島の浅瀬の海底に散らばる、白い破片のようなモノ。フィリピン沿岸警備隊によると、珊瑚(さんご)の残骸だといいます。中国が軍事拠点などを作るため、珊瑚などを使い、埋め立て工事を行う兆候だと分析しています。
中国はこれまでも、浅瀬を埋め立てて、南シナ海で軍事拠点の構築を進めてきました。
中国は、南シナ海のみならず、東シナ海での活動を活発化させていて、中国海警局の船は、沖縄県の尖閣諸島周辺でも、領海侵入を常態化させています。
領有権を巡り、強硬な姿勢を示す中国。
フィリピン沿岸警備隊は、中国に対抗するため、日本との共闘に期待をよせました。
フィリピン沿岸警備隊 報道官(フィリピン・マニラ、17日)
「中国は、国際法にあからさまに違反しています」
「日本は、フィリピンや他の東南アジアの小国が、中国のような“いじめっ子”に立ち向かうのを支援できる、責任ある地域大国だと思う」
◇
各国が懸念を深めるなか、中国は、海洋進出を着実に進めています。