アメリカ国民の“矛盾するような2つの期待”背負って…バイデン大統領がイスラエルへ 中国・ロシアにも大きな動きが 【#みんなのギモン】
18日のギモンは「病院に攻撃 バイデン氏は?」です。
連日お伝えしているイスラエル・パレスチナ情勢ですが、18日はガザ地区の病院の爆発で数百人が死亡するという大きなニュースが入ってきました。
◇“500人超”死亡 会談が延期
◇中国とロシア 影響力は?
■異例のイスラエル訪問も…アラブ側との対談がキャンセルに
アメリカのバイデン大統領が、日本時間18日午後4時現在、イスラエル・テルアビブの空港に向かっています。空港ではイスラエルのネタニヤフ首相が出迎えることになっています。
ただ、この訪問の直前に大きな事態が起きてしまいました。ガザ地区北部の病院が爆発し、イスラム組織「ハマス」は500人以上が死亡、「イスラエル軍の空爆を受けた」と主張しています。
一方で、イスラエル軍は「ハマスとは別の武装組織が発射したロケット弾によるものだ」と反論していて、お互い主張が食い違っています。
この爆発は、バイデン大統領がアメリカ・ワシントンを出発する数時間前に起きました。バイデン大統領はこの一報を受け、大統領専用機(=エアフォースワン)の出発も遅らせて対応を協議しました。
そして早速、この爆発による影響も出ています。実はバイデン大統領は、イスラエルを訪問した後、ヨルダンに移動してパレスチナ自治政府のアッバス議長、エジプトのシシ大統領、ヨルダンのアブドラ国王など、アラブ諸国の首脳らと会談を行う予定でしたが、アッバス議長が対応にあたるため、アラブ側との対談がキャンセルとなってしまいました。アメリカ側は延期と言っていますが、今回(の訪問が終わると)イスラエルから戻ることになっているので、当面(会談の)見通しがたっていない状況です。
ただ、それでもバイデン大統領は向かうことにしました。これには「大統領の強いこだわりがあった」といいます。
今回の訪問はイスラエル側から持ちかけられたということですが、NBCテレビによると、バイデン大統領は「危機の時こそ対面のコミュニケーションを望む」として、大統領自身が訪問の強い意欲を示したとアメリカ政府関係者の話を伝えています。
バイデン大統領は、アメリカ国民の強い思いも背負ってイスラエル入りするわけですが、気になる2つの数字があります。
ロイター通信などの世論調査で、「アメリカはイスラエルを支援すべきか」という問いに対して、41%もの国民が「支援すべきだ」とイスラエル支持を訴えています。同じ質問を2014年にイスラエルがガザ地区に侵攻した時にもしましたが、この時の「イスラエル支援」は22%でした。今回、いかにイスラエル支持がアメリカ世論の中でも強いかが明確にわかります。
もう1つ、「ガザ市民の安全な避難をアメリカが積極的に働きかけるべきか」という質問には78%が支持しています。つまり今、地上侵攻が始まろうとしていますが、イスラエルの支持には「軍事支援」も含まれます。その一方で「パレスチナ市民の犠牲は出さないで欲しい」というアメリカ国民の声、この一見、相反する矛盾するような「2つの期待」を背負ってイスラエルを訪問しようとしているわけです。
外交関係者に聞きましたが、「バイデン大統領にとっても非常に政治的リスクが高い。よく訪問を決断したな、という感じだ」と話していました。
この政治的リスク、どういうことかというと、今回バイデン大統領は自らイスラエルに乗り込んでいって、仮にその直後に地上侵攻が始まって、民間人に多数の犠牲が出ることになれば、「止められなかった大統領」としてのレッテルを貼られてしまいます。また、「ハマス」への攻撃に後ろ向きな発言を、現地での滞在中にすれば、これも国民から批判を受ける。非常に難しい外交といえます。
続いてのポイントは「中国とロシア 影響力は?」です。
18日は、もう1つ大きな動きが北京でありました。北京で行われた中国の経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムに、ロシアのプーチン大統領も出席しました。その後、中国の習近平国家主席と首脳会談を行っています。
2人の首脳はそれぞれスピーチをしましたが、中東への言及はありませんでした。その後、中露首脳会談も行われましたが、こちらの内容は18日午後4時時点でまだ入ってきていません。
これまでの中露の動きを整理します。今回の軍事衝突が起きて以降、両国とも「ハマス」への直接の非難は避けています。
イスラエルを支持するアメリカとは一線を画す、この点で両国の思惑は一致していますから、欧米との対抗軸を作ろうとしている可能性もあります。
まず、ロシア政治に詳しい廣瀬陽子教授は「今のロシアには当然、どちらかの国に軍事支援する余裕はなく、世界の目をウクライナからそらすことが重要」という話をしていました。
ある外交筋もこの現状を「子どものサッカーのようだ」というふうに例えていました。国際社会の目がイスラエルという1つのボールに向かっている中で、子どもたちはボールに集まっていきますから、その中でウクライナという大事な要素に目が行かなくなる、ウクライナへの関心が薄れてしまう。結局、喜ぶのはロシアというわけです。
では、中国はどうかというと、中国政治に詳しい興梠一郎教授は、「結論から言うと、中国は何もできない」と話していました。
中国は、パレスチナ側、イスラエル側の両方と関係を維持したい。中国は「ハマス」との関係が親密なイランとの関係を重視しています。一方でイスラエルは最先端技術を持っています。イスラエルとの関係も維持して技術を手にしたい。こういった思惑もあって、両方との関係を維持したいとしているとのことです。
◇
イスラエルの地上侵攻が近いとされる中で、アメリカのバイデン大統領がイスラエル入りします。民間人の犠牲を食い止める外交の大きな局面を迎えています。注目のバイデン大統領・ネタニヤフ首相の首脳会談が始まります。
(2023年10月18日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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