ガザ地区への「地上侵攻」山場は? 専門家「米の準備が整えばゴーサインか」 “人質解放”交渉でも…「もはや止められない」ワケ
イスラム組織「ハマス」が実効支配するパレスチナ自治区ガザへの、イスラエルによる地上侵攻はどうなるのか。「今週中が山場」とみる中東情勢の専門家は、ハマスによる大人数の人質解放はあり得る一方、「地上侵攻は止められない」と分析しています。
■「地上侵攻の延期に同意」…米紙報道
有働由美子キャスター
「イスラエル軍が着々と地上侵攻の準備を進める中、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は『イスラエルがアメリカの要請により、地上侵攻を遅らせることに同意した』と報じました。実際、大規模な地上侵攻はどうなりそうでしょうか?」
■「山場」は? 専門家が示すポイント
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「今週中が山場になりそうです。中東情勢が専門の慶応義塾大学・田中浩一郎教授によると、ポイントは2つあります。1つ目は、アメリカが人道支援や人質の解放に向けた交渉をまずは優先するべきだ、としていることです」
「2つ目はアメリカ側の事情で、もし今地上侵攻が始まれば、周辺地域にも飛び火して、そこに駐留するアメリカ軍も危険にさらされるかもしれない。そのため、アメリカ軍を守るため、防空システムの配備を整えるまで待ってほしい、ということです」
「それが今週中、つまり数日以内だということです。田中教授は『アメリカの準備が整えば、それが地上侵攻のゴーサインになる可能性がある』と指摘しています」
■ハマスによる人質解放の可能性は?
有働キャスター
「『数日以内の可能性』で言えば、ハマスによる多くの人質の解放も取りざたされていますが、これは実現しそうですか?」
小栗委員長
「田中教授によると、ハマスはこれまでも 2 人ずつなど小出しに人質を解放してきましたが、これは条件付きの解放ではありませんでした」
「ただ今回は大人数の解放になるのであれば、燃料の供給や一時停戦の交渉材料にしようとしているのではないか。この交渉がうまくいけば、大人数の解放はあり得るといいます」
■地上侵攻を遅らせることには成功か
有働キャスター
「交渉をしたとしても地上侵攻を止めることはできないのでしょうか?」
小栗委員長
「田中教授は『イスラエルはやるつもりで、アメリカはむしろ地上侵攻を始めるのに備えて周辺を固めているので、もはや止めることはできない』と指摘。イスラエルとしてはもっと早くしたかったので、フラストレーションがたまっているということです」
「実際、ネタニヤフ首相は前線の部隊を訪問して兵士たちを鼓舞していました。田中教授によると、本当はこの時には(地上侵攻を)やろうとしていたはずです」
「ただ、ハマスは人質を小出しにすることで地上侵攻を遅らせることには成功していて、イスラエル軍としては思うようになっていないといいます」
■廣瀬さん「人道支援のプレッシャーを」
廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「世界各国の目が厳しいというので、数日(地上侵攻を)遅らせざるを得ないこともあるのかなと思いました」
「燃料や食料はしかるべきルートを使ってきちんと届けてほしいですし、『人道支援は絶対にしないといけない』というプレッシャーを世界各国や僕たち一人ひとりが送り続けないといけないですね」
有働キャスター
「そうですね。結局(国連)安保理ですら一致したメッセージを出せないままです」
「『zero』の取材にも答えてくださる国境なき医師団の白根麻衣子さんをはじめ、何の罪もない善意の人々もガザ地区から出られなくなっています。せめて一時的な退避エリアを作るなど、命を守る試みを諦めずに考えてほしいです」
(10月26日『news zero』より)