トランプ大統領感染判明 今後の影響は?
アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したという衝撃的なニュースが飛び込んできました。ちょうど1か月後に迫った大統領選挙にどう影響するのでしょうか。
■トランプ大統領、コロナを軽視
日本時間2日13:54にトランプ大統領が自らツイッターにこのように投稿しました。
「今夜、メラニアと私は新型コロナウイルスの検査で陽性となった。隔離と治療のプロセスをただちに始める。私たちはともにこれを乗り越えていく」
夫婦で陽性となったということを明らかにしました。
アメリカ政治に詳しい慶応義塾大学の渡辺靖教授はトランプ大統領は「これまで新型コロナを“軽視”する発言をたびたびしてきて、3密状態で支持者集会などを決行してきたことからコロナをやや“甘く”みていた部分があったのではないか」と話しました。
トランプ大統領はアメリカが世界最大の感染国であるにも関わらず、経済活動を優先し、学校の早期再開なども主張してきました。
5月にマスク工場を見学した際も大統領自身はマスクをつけておらず、野党などから批判の声があがっていました。 「新型コロナはいずれ消える」と楽観視してきて自身はマスクの着用を避け続けていました。 公の場でマスクを着けているのが初めて確認されたのは7月になってからでした。
■「陽性」判明した最側近、マスクはせず
感染経路はどうなのでしょうか。
トランプ大統領の周辺では、大統領と日常的にやりとりをする最側近の一人、大統領顧問のホープ・ヒックス氏が現地時間1日、陽性であることが明らかになっています。
ヒックス氏はその前日の30日、大統領に同行して支持者集会に参加したほか29日の討論会でも大統領とともに専用機で移動していました。ただその際、マスクを『着用していない』姿が目撃されていました。
大統領夫妻が機内でマスクしていたかどうかはわかっていませんが、側近が感染して、大統領はツイッターに「休みも取らずに懸命に働いてきたヒックス氏が陽性と判明した。ひどいことだ!」と投稿していました。「我々は隔離措置を始める」と表明していましたが、その後、メラニア夫人とともに検査を受けさきほど陽性が明らかになっています。
海外では大統領や首相など国のリーダーが自ら感染するケースがこれまでにもありました。3月にはイギリスのジョンソン首相が入院しました。 ブラジルのボルソナロ大統領もマスクをつけないなど批判されてきましたが、7月に感染しています。 二人ともしばらくは公邸にとどまりビデオ会議などで公務を続けていました。
■大統領選への影響は大きい
ただトランプ大統領の場合、大統領選挙が控えていて、影響が大きいです。 期間は明らかにされていませんが、当面は『隔離措置』をとるため選挙活動を控えざるを得ず、大統領選で大きなダメージになるとみられています。
11月3日の大統領選挙に向けて現地時間の2日、フロリダ州で支持者集会が予定されていましたが先ほど中止が発表されました。さらに2日にワシントン市内のトランプホテルで予定していた選挙資金集めの集会も中止になりました。
ほかにも10月3日にはウィスコンシン州で支持者集会が予定されており、来週木曜日(15日)には、マイアミでバイデン候補と2回目の討論会、その次の週22日木曜日にはナッシュビルで3回目の討論会も予定されていますが、どうなるか…
ちょうど1か月前というタイミング。影響は計り知れません。
トランプ大統領は当初、コロナは風邪のようなもので、夏になればウイルスは消滅するなどと言って、かなり軽視していました。 最近までマスクもつけず、自分はバイデン氏と違って強い大統領だということをアピールしてきました。その当人がコロナで陽性になったということで、これまでトランプ氏を熱烈に支持してきた岩盤支持層にも大きな衝撃が広がる可能性があります。
■今後の2つのポイント 大統領に有利な場合も?
先ほどの渡辺靖教授によると、今後のポイントは2つです。
(1)症状の重さ
(2)回復の早さ
症状が重ければ、現職の大統領としての実務が続けられなくなります。ホワイトハウスというかなり厳重に感染対策が行われているはずの場所で、側近に続いて大統領夫妻が感染したとなれば、ホワイトハウスの統治機能そのものに大きな疑問符がつきます。
これまでトランプ氏のコロナ政策を批判してきた野党・民主党は、ここぞとばかりに、『自業自得』だと批判の声を高めることが予想され、トランプ支持者から見てもトランプ氏がこれまで主張してきたことの信ぴょう性が崩れることになります。ただ、その一方で重症化すれば同情の声もあがり、病気の人への批判はやりづらくなるという面もあります。
一方で、症状が治まって比較的回復も早かった場合は、逆にトランプ氏に『有利』に働く可能性も指摘されています。
支持者らはトランプ氏自身が言っていたように「やはりコロナは大したことなく、大統領は強い人だ」と再認識することになりますし、選挙集会なども予定通り行われれば、トランプにとっては、自分はコロナから回復した「強い指導者」であるとアピールする場となるので、追い風になる可能性もあります。
そういう意味では、今回の感染判明が一方的にトランプに不利になるわけではないという見方もあり、今後の最大の注目点はトランプ氏が重症化するか、比較的早く回復するかというところです。
選挙の直前に驚くべきことが起きて選挙情勢を大きくひっくり返すことを「オクトーバーサプライズ」と言いますが、まさに文字通り、10月に入ったばかりでの感染確認は、最大のオクトーバーサプライズになったと言えるかもしれません。
(2020年10月2日 16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)