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バイデン大統領の米国(3)マスク義務化?

2021年2月11日 6:07
バイデン大統領の米国(3)マスク義務化?

第46代アメリカ大統領ジョー・バイデン氏は、分断のアメリカをどこへ導くのか? トランプ前大統領の後を受けたバイデン政権は、いったいどのような内政・外交の課題に直面するのか? アメリカに詳しい識者4人に聞いた第3弾。


■まずは「マスクの義務化」だが…

――バイデン大統領が就任早々に直面した課題として、4人の識者全員が挙げた「新型コロナウイルス対策」。そもそもアメリカの新型コロナ対策が後手にまわった背景について、上智大学の前嶋和弘教授氏はこう指摘する。
(前嶋氏)
「そもそも新型コロナの感染というのは、かなり“党派的”だったんです。例えば、密なところは『都市』であり、やはり東海岸、西海岸、このあたりから増えてきた。これは何かというと、民主党の牙城なんです」

「トランプ前大統領としては、(新型コロナの感染対策に力を入れることは)民主党を助けるという感じがどうもあって、だいぶ対策が遅れたところがあります。そのためトランプ前大統領は、自分の支持者の意見を代弁する意味もあって、マスクをしなかったわけです。つまり『都市のために全米、あるいは1つの州がロックダウンなんて駄目だ、経済再開だ』と訴えていたのがトランプ前大統領でした。このやり方だと、なかなかマスクをするということを徹底できない。その代わりワクチンの開発には、『ワープスピード作戦』という形でお金をしっかり出したわけです」

「これに対してバイデン政権では、一気に最初の100日でマスクを、基本的には連邦政府の関係者には必ずさせて、国民にもしっかりとマスクを携帯し、使用を励行すると強く言っています。そしてワクチンも一気に接種を増やしていく。この2つが、喫緊の新型コロナ対策のポイントになっています」


――しかし笹川平和財団の渡部恒雄氏は、このマスク着用の徹底にも課題があるという。
(渡部氏)
「この点はアメリカの文化の難しいところで、個人を大事にする文化の中で『マスクを強制する』というのは、トランプ支持者だけじゃなくて、おそらくバイデン大統領を支持している人にも『強制までは、ちょっと…』という意見が出てくると思います。これは日本でもそうで、例えば新型コロナ対策で罰則規定という話になると、『より厳しい措置をしろ』と言っている野党が、『しかし、罰則規定まではいかがなものか…』となる」

「リベラル側というのは、そういうところがあって、個人の権利を守る側でもあるので、そういう意味でバイデン大統領は共和党の保守派も気にしなくてはならない一方で、自分の政党支持者の中でもリベラル派や左派といわれる人たちにも両方、目配せしなければならない。そこがバイデン大統領の難しい立ち位置になるんだと思います」


■課題は「コロナ」だけではない

――キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦氏は、バイデン政権の課題として「新型コロナ対策」はもちろんだが、むしろ「経済」が気にかかると指摘する。
(宮家氏)
「トランプ前大統領の新型コロナへの対応が遅く、非常にまずかったせいか、今後の課題は『ワクチンをどうやって打つか』ということなのです。民主党が政権に戻って『前政権は、まともな計画がない』と悪口を言うのは当然だと思いますが、とはいえコロナ騒ぎというのはすぐには収まらない。当分続くのだろうという気がしています」

「そうすると気になるのは、私の専門ではないですが、これだけ経済が痛めつけられているはずなのに、なぜあんなに株価が上がるのか? それを考えると、どこかで調整が起きてもおかしくないのではないかと思っています。このまま右肩上がりのはずがないということです」

「そして当然のことながら、これから規制をどんどん強めていくだろうし、温暖化の問題ではアメリカの産業に対して厳しいことを言うだろうし、当然、増税をするだろうし、リベラル派は大企業に対して、あるいは軍に対し厳しいことを言い出すに決まっているし…その収拾がつくかどうか分かりませんが、バイデン政権にとってはやはり『コロナ』と『経済』というものにうまく対応しないと、決してトランプ政権は笑えなくなると思います」


――元駐日大使の藤崎一郎氏は、宮家氏同様「コロナ」と「経済」がバイデン新政権の喫緊の課題だとしたうえで、さらに2つテーマを指摘する
(藤崎氏)
「まず最初の2つが、どの国でも共通しますけど、『コロナ』と『経済の立て直し』ですね、この2つがどの国も直面している大きな課題です。そしてバイデンさん自身、これまで公約上掲げている課題としては、内政では税制を改革すること、ある意味で富裕者に対してより厳しく、下の方に手厚い形に税制を改正するということ」

「2番目は、エネルギー関係者にはちょっと厳しくなるかもしれないけれども、『気候変動』に重点を置いた政策をとること。3番目に、非常に問題となっている『人種、人権の問題等』について、何が具体的に示せるか、融和のためにですね」


待ったなしの「コロナ対策」と「経済対策」。さらには「気候変動」「人種差別問題」と、大きな課題に向き合わなければならないバイデン政権は、一体どのような手に出るのか…続きは次回に。


■4人の識者
 藤崎一郎氏(中曽根康弘世界平和研究所理事長、元駐米大使)
  ※崎は右上が立のサキ
 前嶋和弘氏(上智大学教授)
 宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
 渡部恒雄氏(笹川平和財団 上席研究員)

*この記事は、4人の識者に個別にインタビューしたものを再構成したものです。

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