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<分析>“戦闘休止と人質解放”暫定合意か ガザ情勢をめぐる2つのポイント【バンキシャ!】

2023年11月20日 10:27
<分析>“戦闘休止と人質解放”暫定合意か ガザ情勢をめぐる2つのポイント【バンキシャ!】

厳しい状況が続くガザ情勢ですが、アメリカの有力紙ワシントンポストは「戦闘の休止と人質の一部解放で、イスラエルとハマスが暫定的に合意した」と報じました。

「シファ病院にハマスの“拠点”はあるのか」「ガザ地区南部への作戦拡大と狙い」――ガザ情勢をめぐる2つのポイントについて、中東情勢が専門の慶応大学・田中浩一郎教授が分析します。(真相報道バンキシャ!)

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アメリカの有力紙ワシントンポストは、アメリカの仲介で人質の女性や子ども数十人の解放とひきかえに5日間、戦闘を休止することでイスラエルとイスラム組織「ハマス」が暫定的な合意に達したと報じました。数日以内に実行される可能性があるとしています。

ただ、アメリカ政府関係者は「まだ合意には達していない。合意できるように努力している」とSNSで投稿しています。

パレスチナ自治区ガザ地区では、イスラエルの攻撃による被害が拡大していて、中東のメディア「アルジャジーラ」などによりますと、ガザ北部で国連が運営する学校や避難所が空爆をうけ80人以上が死亡したとみられています。

──“戦闘休止”という新しい情報が入ってきましたが、どう受け止めていますか?

田中教授
「大きな被害が出ているので、戦闘休止以上に、戦闘停止あるいは休戦にもっていきたいんですけど、まずこの報道自体がちょっとまだ怪しいんですよね。(ワシントンポストは)信憑性の高い新聞ではあるんですけども、ただアメリカとハマスの間には直接の交渉チャンネルはもともとないので、アメリカが仲介したという話になってくるとちょっと怪しいなという感じには見えてしまいますね」

──なぜこのタイミングでこの情報が出てきたんでしょうか?

田中教授
「シファ病院のイスラエル軍が占拠して、いろいろと捜索しているわけですけども、当初イスラエル軍が主張していたような大規模なハマスの地下設備、あるいは司令部にあたるようなものがあったと示すだけの材料が出てきてないので、アメリカもイスラエルに対して、イスラエル自身もここらへんで対応を変えなければいけないのかな、という風に考え始めたかもしれないですね」

──イスラエル軍がシファ病院でハマスの武器や地下トンネルを見つけたと映像で主張していますが、率直にどう感じましたか?

田中教授
「大規模な拠点というにはまったく足りないというか、これで本部だとか作戦司令部だといったら、笑い種になってしまうと思うんですよね。銃火器の類としても、よくあるものなので、そんなに特殊なものではない。手榴弾というのはまずいかもしれませんが、『AK47カラシニコフ銃』は警備員のために置いているかもしれないので、これ自体がハマスの基地を示すことにはならないですね。地下トンネルも中がどういう風になっているのかわからないですが、ガザはたびたびイスラエル軍の空爆などに遭っているので、いわゆるシェルターを地下に掘っている、あるいは地下に設営すること自体はそんなに不思議なことではない。ひょっとしたらシェルターかもしれないですよね。ただ、横につながっていれば地下トンネルということになるんでしょうけど、上から穴だけを見せられて『これが地下トンネルです』と言われても、まだ(根拠が)弱いですよね」

──イスラエル軍は、この病院に「ハマスの拠点がある」と主張して、民間人を巻き込む攻撃の正当な大義としていたわけですが、何が起こっているんでしょうか?

田中教授
「明らかにイスラエル軍の主張がかなり怪しいと。あるいは、強い根拠がないまま作戦を遂行するために、今までコンピューターグラフィックス(=CG)を出したり、いろんなことを主張してきたりしたんじゃないかということを考えなければいけないんだと思います。そういう目で世界のメディアも見始めているので、イスラエル軍が出してきている映像の粗探しといいますか、どうも捏造じゃないかというような話をメディアが書き立てたり、主張したりするようになってきてしまってますね」

──教授の見解として、「拠点だけど証拠が見つかっていない」のか、そうではないのか。感触はいかがでしょうか?

田中教授
「私は現場にいないので、どこまで捜索が進んでいるのか確認はできないですが、すでに何日間も経ってこれぐらいしか出てこないというと、ちょっと主張が弱いなと思いますね」

──アメリカも「ガザ地区の病院をハマスが軍事利用している」ことを確認したと明言していますが。

田中教授
「国防総省の報道官は、質問に答える形でアメリカ独自の情報でないと言っているんですよ。つまりどこかから寄せられた情報ということになると。明言はしていないですが、イスラエルから伝えられた情報をもとに言っている可能性も否定しきれないですね」

──そうした中で、戦闘休止の話が突如出てきたのは、シファ病院での作戦結果と関係はあるのでしょうか?

田中教授
「明らかに作戦としては失敗の可能性が高くなってきているので、それにあわせてアメリカの対応、イスラエルもそれにある程度応じざるをえない環境に置かれてきているように見えます。ただ、まだ何もないと断言できるほどの状況でもないので、かなり怪しいということだけは言っておきます」

イスラエル軍の報道官は17日、「ハマスが存在する場所なら、ガザ地区の南部であっても作戦を実行する」と強調し、南部での地上作戦の可能性を示唆しました。

──イスラエル軍は、住民らに避難を呼びかけた南部への作戦拡大はあるのでしょうか?

田中教授
「当然あると思います。北部を徹底的に攻撃して、ハマスの拠点があるんだと主張したところには何もなさそうだということになったら、消去法で必然的に中部から南部にあるんだろうと。ある種今まで主張してきたことのやり直しを追求すると思います」

──戦闘休止で合意という情報は、戦火の拡大を止めることになるのでしょうか?

田中教授
「もちろん戦闘休止が行われれば、このまま継続されるよりはまだいいのですが、本質的に停戦にもっていけるだけの状況にはないと思います。むしろ北部でハマスを殲滅することができなかったということになってしまうので、そうなれば残された南部に攻撃を集中して、北部と同様にあらゆる建物を破壊していくという展開が予想されます」

(11月19日放送『真相報道バンキシャ!』より)