トランプ氏「資源はよこせ」、プーチン氏「ウクライナを支配下に」──米露“直接交渉”へ 思惑と焦点は?【#みんなのギモン】
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そこで今回の#みんなのギモンでは、「本当にこれで戦争は終わるの?」をテーマに解説します。
「アメリカのトランプ大統領が、ロシアのプーチン大統領と電話で会談。ウクライナで行われている戦闘の終結に向け、直ちに交渉を始めるということで両者が合意したと明らかにしました」
「12日、トランプ大統領は『プーチン大統領は和平を望んでいると思う。(ウクライナの)ゼレンスキー大統領、そして私も同じだ。あの戦争は大惨事です。すぐに(戦闘を)終わらせられたら素晴らしいでしょう』と発言しました」
「また、トランプ大統領はゼレンスキー大統領とも電話会談を行い、ゼレンスキー氏は『和平の実現に向けて協議した』と明らかにしています」
鈴江奈々アナウンサー
「トランプ氏には大統領になる前から『1日で戦争を終わらせる』という発言もありましたし、そこに向けて、まさに今動いているということなんですね」
菅原解説委員
「トランプ大統領は自身のSNSで、プーチン大統領と『数百万人の死を食い止めたいという認識で一致した』と述べていて、まずは現地で起きている戦闘の終結に向け、アメリカとロシア、それぞれのチームが直ちに交渉を始めることで合意したとしています」
鈴江アナウンサー
「一方で、これだけもう3年近く戦争が続いている中でどこで決着させるのか。それはなかなか簡単に描けるものでもないでしょうね」
菅原解説委員
「2022年2月にウクライナ侵攻が始まりましたが、約3年もの間、戦闘が続いています。死者の数は、あくまでゼレンスキー大統領が明らかにした数字ですが、ウクライナ側が約4万5100人、ロシア側は約35万人に上っているということです」
「戦況はロシア側がウクライナの東部や南部で優位に進めてきましたが、去年8月にウクライナ軍が突如としてロシアとの国境を越える越境攻撃を仕掛けました」
「ロシア西部のクルスク州で、ロシア軍も反撃し一部の領土を奪還していますが、現在もウクライナが支配する地域が残っています」
忽滑谷こころアナウンサー
「戦争を終わらせるということになれば、これらの領土・地域についても交渉が進められていくということなんですか?」
菅原解説委員
「そうですね。ゼレンスキー大統領は、先日公開されたイギリス・ガーディアン紙のインタビューの中で、トランプ大統領がロシアを交渉のテーブルにつかせることに成功した場合、『ロシアに領土交換を提案する』と語っています」
「また、クルスク州を念頭に『我々は1つの領土を別の領土と交換するつもりだ』としています。ただ、どの領土と交換するのかについては『私たちのすべての領土が重要です』と述べるにとどまっています」
森圭介アナウンサー
「侵攻が始まる前のウクライナの領土すべてを奪還するのが1つの大きな目標でしょうから、なかなか落としどころは難しくなりますよね」
菅原解説委員
「アメリカ側は、ウクライナの領土をどう考えているのでしょうか。アメリカの安全保障を担うヘグセス国防長官は、『ウクライナが占領されたすべての領土を回復することは非現実的な目標だ』と発言。それを認めることから出発しなければならないと述べました」
鈴江アナウンサー
「これはアメリカ側の考え方ですが、ではそれを受けてロシアやウクライナがどう出るのでしょうか?」
菅原解説委員
「それぞれの思惑を、現地で取材を続ける記者に聞いてみたいと思います」
末岡寛雄・ニューヨーク支局長
「ウクライナ侵攻を巡ってプーチン大統領との直接交渉にアメリカが舵を切ったことは、政策の大きな転換だとアメリカメディアは報じています」
「バイデン政権でアメリカはウクライナに対して巨額の軍事・経済支援を行っていて、増大する戦費の負担などから、トランプ氏は『戦争を終わらせる』と選挙期間中から何度も国民に訴えていました」
「ヨーロッパを訪問中のヘグセス国防長官は12日、ウクライナが求めているNATO(北大西洋条約機構)への加盟に否定的な考えを示しました。アメリカはNATOの一員でもあるので、ウクライナの防衛を巡ってアメリカ軍を派兵したくないという狙いが見て取れます」
桐谷美玲キャスター
「つまり、トランプ氏としてはもうウクライナにはお金も人も出したくないということなのでしょうか?」
末岡支局長
「そうですね。さらにアメリカは、ウクライナにある要求を強めています。トランプ氏は3日、ウクライナを支援した見返りとして、貴重な鉱物資源のレアアースの供給を求める考えを示しました」
「ロイター通信は、アメリカのベセント財務長官が12日にトランプ政権の閣僚として初めてウクライナを訪問したと報じていて、鉱物資源開発について協議するとみられます。軍事支援と資源供与を取引としてちらつかせるトランプ氏の思惑が透けて見えます」
菅原解説委員
「金も人も出したくない、けれども資源はよこせという、ウクライナにとってかなり厳しいスタンスですよね。一方のプーチン大統領はどんな思惑なのでしょうか?」
平山晃一・モスクワ支局長
「プーチン大統領はこれまでトランプ氏を繰り返し称賛し、直接会談に向けて熱烈なラブコールを送っていました。これは相手がトランプ氏ならロシアに有利な条件で停戦ができるという期待の表れだと言えます」
「プーチン大統領はウクライナに対し、一部地域からの軍の撤退やNATO非加盟、武装解除など実質的な降伏を迫っていて、自国の支配下に置くのが狙いです。戦況で優位に立つロシアには停戦を急ぐ必要はなく、今後強気な姿勢で交渉に臨むとみられます」
鈴江アナウンサー
「実際に戦争が終わるまでの道のりは長くなりそうでしょうか?」
平山支局長
「プーチン大統領の要求はあまりにも過大で、実際にどのような着地点が見出せるのかは不透明です。さらに今後の焦点になるのが、ロシア西部クルスク州の問題です」
「ゼレンスキー大統領は交渉の切り札として領土交換を提案するも、プーチン大統領は断固拒否の構えで、ロシア軍は奪還に向けて激しい戦闘を続けています。プーチン大統領のメンツもかかる中、交渉の行方に大きな影響を与えるとみられます」
菅原解説委員
「まだまだこの戦争がどういった形で終結を迎えるのか、誰も見通せないような状況です」
鈴江アナウンサー
「まさにアメリカとロシアの間で交渉が始まったばかりというところですが、直接会談も今後ありそうでしょうか?」
菅原解説委員
「可能性はあるとみられています。今回の米露の会談は電話でしたが、直接会談についてもトランプ氏は『プーチン大統領と遠くない将来に直接会談を行う。場所はサウジアラビアだろう』とまで述べています」
「さらにその後は相互訪問、お互いにアメリカとロシアを訪問するというようなこともにおわせています。直接ロシアに乗り込んで交渉するということもあるかもしれません」
「戦闘を終わらせたいという共通の願いがある一方で、力による現状変更は認められないというのが、日本を含む多くの先進国のスタンスです。今後の交渉の行方を世界が注目しています」
(2025年2月13日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)