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サッカーW杯予選で北朝鮮が「ドタキャン」 日本の“悪性伝染病”警戒?【#みんなのギモン】

2024年3月23日 12:28
サッカーW杯予選で北朝鮮が「ドタキャン」 日本の“悪性伝染病”警戒?【#みんなのギモン】
2026年FIFAワールドカップのアジア2次予選で、26日に北朝鮮・平壌で予定されていた試合が開催不能となりました。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「北朝鮮“ドタキャン”のワケ」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●金正恩氏もサッカー好き
●“悪性伝染病”極度に警戒?

■北朝鮮側「他の場所で開催したい」

小野高弘・日本テレビ解説委員
「異例なことが起きました。サッカーワールドカップ2次予選で、日本代表の次の試合は26日に北朝鮮・平壌で行われる予定でしたが、複数の政府関係者によると、北朝鮮側は日本側に『平壌では開催できない。他の場所で開催したい』と伝えてきました」

「理由については、『日本で“悪性伝染病”が急速に広まっているため』と説明したといいます。こうしたことから試合は、北朝鮮以外の第三国で開催する方向で調整に入ったといいます」

■北京経由、試合前日に平壌入りの予定が

「選手たちは22日に中国・北京に向かい、調整をした後、試合前日の25日に平壌に入る予定でした。ただ今回の情報を受けて北京行きを中止し、22日午後5時から千葉県でトレーニングを行うということです」

鈴江奈々アナウンサー
「試合が終わった翌日のスケジュールがこんなに急きょ変わってしまって、調整する場所がドタバタで変わるというのは選手の皆さんにとってかなり負荷があるんじゃないかと本当に心配になります」

■国を挙げて注力…平壌にサッカー学校も

小野解説委員
「北朝鮮も分かっています、サッカーを軽く見ているんじゃないんです。北朝鮮は国を挙げてサッカーに力を入れています」

「2013年には平壌にサッカー学校が開校しました。サッカーのエリートたちが全国から集まってここで学んでいます。屋外にはサッカーグラウンドが5面もあります」

「北朝鮮のサッカー関係者によると、金正恩総書記はサッカーの国際大会に重大な関心を寄せていて、この学校にも直接訪れて指導を行ったことがあるということです」

市來玲奈アナウンサー
「サッカー学校があるということに驚きましたが、サッカーへの思いが強いんだなということがすごく分かりました。だからこそ、なぜ今このようなことになっているんだろうと疑問が残りますね」

■「なでしこジャパン」で以前も中止に

小野解説委員
「平壌の市民もきっと楽しみにしていたと思うんですよ。実際、北朝鮮ではサッカーは国民的な人気が高く、過去にはワールドカップの出場経験もあります。ただサッカーの北朝鮮での試合をめぐっては、前にも中止になったことがありました」

「女子日本代表のなでしこジャパンは2月、パリオリンピック出場をかけて北朝鮮と平壌で予選を行う予定でした。ところがアジアサッカー連盟が『競技運営周りに不透明なことが多い』などとして中立地(日本でも北朝鮮でもない地域)での開催を提案しました」

「急きょ開催地が未定となり、試合の3日前にサウジアラビアでの開催が決まったということがありました」

藤井貴彦アナウンサー
「だいたい代表合宿というのは試合前に数日、しっかりと時間をとって行われるんですが、暑さ対策や寒さ対策に時間をかなり要するんですよ。3日前にサウジアラビアで開催決定と言われても、気候やキックオフ時間によって調整スケジュールがガラッと変わってしまいます」

「選手にとってもケガのリスクが高くなりますし、どこでプレーをするか選手はずっとイメージを膨らませていますので、これがいったんゼロになってしまうのは選手にとっても厳しいと思いますね」

■労働新聞「感染経路がコロナと類似」

小野解説委員
「北朝鮮も、選手への影響は分かっているはずなんですよ。そのため『駆け引きじゃないか』『意図があるんじゃないか』とみる人もいたぐらいです。ではなぜ今回、北朝鮮側から開催地の変更を申し出てきたのか」

「21日の北朝鮮の労働新聞は、日本で開催地の変更が伝えられる前に、『日本で悪性伝染病が急速に広まっている』と報じました。また『感染経路が(新型)コロナ(ウイルス)と類似している』とも伝えています」

■劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

小野解説委員
「外務省関係者によると、北朝鮮側が主張する伝染病とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を指すといいます。この感染症は溶連菌の感染により、全員ではないですがまれに発症します。発熱などの症状が出た後、数十時間以内に身体の壊死などを引き起こす病気です」

「30歳以上で多くみられ、致死率は約30%と高いのが特徴です。去年の日本国内の感染者数は941人で過去最多でした。今年(速報値)はまだ3月ですが517人と、既に去年の半数を超えている状態です」

鈴江アナウンサー
「確かに心配ではあるんですけれども、北朝鮮が急きょ国際試合をキャンセルするほどの警戒感は、今、日本国内で暮らしていて感じていません。そこに温度差があるのかなと感じますし、なぜ温度差が生まれるのか疑問です」

■リスクに敏感…医療体制が不安な北朝鮮

小野解説委員
「日本ではコロナが5類になって感染対策が緩くなっている中、インフルエンザと同じように感染する人が増えているということです。北朝鮮は医療体制に不安を抱えています。この感染症が入ってくるリスクを恐れているとみられています」

鈴江アナウンサー
「医療体制の差があるということなんですね」

小野解説委員
「北朝鮮は新型コロナが流行した2020年、国境を事実上封鎖しました。感染症に極めて厳しい対応をとってきました」

「もしサッカーの試合があったら、サッカーが大好きな金正恩総書記も試合を見るために会場を訪れる可能性があります。市民だけではなく、最高指導者の健康問題につながりかねないと心配したのかもしれませんね」

■「惑わされず」「どうなるにせよ」

市來アナウンサー
「選手の皆さんのことがやはり心配だなと感じました。今後どうなってしまうんでしょうか?」

小野解説委員
「影響はないのか。選手たちは(21日にあった2次予選の北朝鮮代表との)試合後、こんなコメントをしています」

堂安律選手
「いろいろ未定なところがあるので、僕たちはそれに惑わされずリカバリーして試合に臨みたいと思います」

キャプテンの遠藤航選手
「もともと(平壌に)行けるのかどうかすごく微妙な感じと聞いてたんですけど、とにかく自分たちはどうなるにせよ、試合に向けて準備をしていくしかないと思うんで、最終的な決断を待って、しっかりチーム一丸となって試合に挑みたいなと思います」

■元日本代表に聞く…選手への影響は

小野解説委員
「選手たちはどうなろうとしっかり試合に臨むと言っていますが、会場が急に変わる、4日前になっても場所が決まっていないことで『もちろん選手への影響はある』と言うのは、元サッカー日本代表の槙野智章さんです。自身も北朝鮮でプレーしたことがあるそうです」

槙野さん
「選手は頭の中で、平壌で試合をするイメージを作っている。スタジアムの景色や芝も想定する他、食事やホテルでの過ごし方まで考えている。それが全て変わるのでゲームプランにも影響するし、イメージが崩れてしまうし、ストレスにもなる」

「国際試合が開催地の都合で土壇場で開催できないというのは、あってはならないことだ」

藤井アナウンサー
「ワールドカップに出るというのは選手の人生を変えますからね。2次予選で変な流れになっていくのはもったいないので、いい(形での)開催をしてもらいたいと思います」

小野解説委員
「試合場所が決まらなければ、もしかしたら日本の不戦勝となる可能性もあります。世界で活躍する日本の選手が集結したチームです。しっかりした環境で素晴らしいプレーを展開してほしいです」

(2024年3月22日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html

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