中国で国産コスメ人気…日韓のライバルへ?
中国の国産コスメが成長を続け、一時は時価総額100億ドルを超えるブランドも登場。若者に「国産」への抵抗意識は低く、欧米、日韓のブランドのライバルへと成長するか注目されている。
(NNN中国総局 槻木亮太)
■海外ブランドと見間違う店構え
北京中心部のショッピングモール。ランコムやディオールなど、名だたる海外ブランドが店を構える中に、中国コスメの店も入っている。一見すると海外ブランドかと思わせる洗練された内装で、平日の昼間にもかかわらず多くの買い物客でにぎわっていた。
この日、取材に訪れたのは、中国語で「完美日記」、英語で「PERFECT DIARY」という名の中国ブランド。運営会社は2016年に創業すると急成長を遂げ、2020年には一時、時価総額100億ドルを超えたという。
人気商品は様々な動物の目元が描かれたアイシャドウパレット(129元=約2200円)で、日本にもすでに進出しているというからご存じの方もいるかも知れない。
■急成長の理由は「オンラインでの交流」
華やかなパッケージと手頃な価格とは別に、もうひとつ武器としてきたのが、消費者とのオンラインでの「直接交流」だという。
動画共有アプリTikTokの中国版である「抖音」に多くの商品PR動画を投稿するとともに、そのコメント欄に寄せられた様々な質問や要望にひとつひとつ応えていく。きめ細やかな顧客対応と、素早いニーズの把握が相まって、急成長につながったというのだ。
取材に対応した店長は「同じアジアの国のブランドとして、日本の女性もきっと気に入ってくれると思う」と自信を示した。
■若者は国産ブランドに抵抗感持たず
「今の国産品はとても良いですよ」商品を購入した19歳の女子大学生は屈託のない笑顔でそう答えた。以前は海外の有名ブランドを追い求めたというが、質も使用感も遜色ないと感じ、国産ブランドを買うようになったという。
“Z世代”(90年代後半以降の生まれ)とも呼ばれる若者にとって「中国ブランドだから質が悪い」という認識はなく、むしろ愛国心も相まって好んで購入しているようだ。
店頭で店員にメークを施してもらった客は、「今後は中国メークが主流になるでしょう、韓国メークはもうすぐブームが終わります」と話した。
店側によると、中国メークとは「中国の女性の厳粛で堂々とした美しさ」を表したもので、日韓の化粧のかわいさや清らかさ新しさとは違うという。
この中国メークは日本でも「チャイボーグ(チャイナとサイボーグを合わせた造語、サイボーグのような美しさを目指すとされる)」として認知されつつあるようだ。
■売り上げ上位は欧米や日韓も、じわりと存在感
去年の大型ネットセールでの、化粧品分野の売り上げトップ15を見てみると、1位エスティローダー(米)、2位ランコム(仏)のほか、SK-II(エスケーツー)や資生堂など、欧米日韓の企業が依然として強いものの、中国国産ブランドが3つランクインして存在感を示した。もはや中国ブランドも日本を含めた各国のブランドにとって「ライバル」へと成長しつつある。
ただ中国メディアによると、パーフェクトダイアリーの運営会社は、売り上げを伸ばす一方で、巨額のマーケティング費用による赤字が続いているという。株価も下落し、一時は100億ドルを越えた時価総額は、わずか9か月で32億ドルほどに下がった。
今後さらに成長を続けることが出来るかは、顧客を満足させる商品を投入できるかどうかにかかっている。
■日本はスキンケア分野に注力
巨大な中国市場に新たに打って出る日本企業もある。今年7月に北京で開かれた“美容博覧会”には、日本貿易振興機構(JETRO)の呼びかけで日本の中小企業7社が出展した。それらの会社の商品は、いずれも「スキンケア商品」なのだという。
JETRO北京事務所の高島竜祐所長は、背景について「中国でも高齢化が進み、肌のケアや、いかに若さを保つかということへの関心が増えてきている」と分析する。
その上で、「中国メーカーもどんどん力をつけてくると思うので日本も負けずにブランドを磨いていく必要がある、それを支援していきたい」と語った。
中国ブランドの台頭で今後も激しい競争が続きそうである。