中国で「大谷翔平」商標申請、狙いは? 政治家や俳優も続々…「岸田文雄」申請中、「小池百合子」登録済み【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「中国で『大谷翔平』商標申請?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●中国の業者 取材に応じる
●登録される可能性も?
■ドジャース移籍発表の3日後に申請
「中国で大谷翔平選手の名前が商標申請されていることが分かりました。中国で今、どのような商標が申請されているか見ることができるサイトがあります。『大谷翔平』とあり、申請された日付は去年12月13日です」
「このタイミングは、大谷選手がドジャース移籍を発表した3日後。誰が申請したのか気になるところですが、中国・福建省にあるアパレル関連企業です。衣類に使う商標として申請されているということです」
藤井貴彦アナウンサー
「有名になると、自分の知らないところで名前が商標登録されようとするわけなんですね。大変ですよね」
徳島えりかアナウンサー
「ただ、福建省の企業が大谷翔平の名を付けたアパレルを展開するイメージがいまいち湧かないんですけども、どんな目的があるんでしょうか?」
■業者「なぜ取り下げるんですか?」
加納解説委員
「いっぱい疑問が湧いてきます。日本人としては有名な大谷選手の名前ならそれに乗っかってお金が稼げるからと思いがちですが、現地の記者いわく、中国国内では野球はあまり人気がなく、大谷選手も一般的にはあまり知られていないということです」
市來玲奈アナウンサー
「てっきり、有名だからブームが来ていると思ったら、そうではない。となると、もっとなぜ?という疑問が浮かんできますね」
加納解説委員
「そうですよね。なぜ申請したのか、その企業に28日、電話取材しました」
――「大谷翔平」を商標申請していますよね?
「『大谷翔平』は私が自分で商標申請しました」
――彼の名前をどんな商品に付けますか?
「服や靴、帽子ですよ」
――彼が世界的に有名な野球選手だと知っていますか?
「私は知りません」
――商標申請を取り下げる意向はないですか?
「取り下げる? なぜ取り下げるんですか?」
加納解説委員
「大谷選手のことを知らないと話していて、目的などについては答えてもらえませんでした」
刈川くるみキャスター
「自分たちが商標登録をしたい名前だったら、事前にどういう人なのか、何をしているのか、気にならないのかなと思いますし、調べればご活躍は出てくるんじゃないかなと疑問が残ります」
■店構えも類似…「無印良品」でトラブル
加納解説委員
「そうですよね。なんかモヤっとしますよね。過去には中国の商標をめぐってトラブルになったケースがあります」
「中国企業がタオルなどで『無印良品』という商標を登録していたことから、日本の本家『良品計画』との間で裁判となりました。この裁判は2019年、本家が敗訴するという衝撃的な結末となりました」
■数千万円で商標権を買った日本企業も
加納解説委員
「そもそも商標登録をすることで、どんなメリットがあるのか。中国の商標権に詳しいBLJ法律事務所の遠藤誠弁護士に聞きました」
「1つはライセンス契約です。例えば、『藤井貴彦』という名前が書かれたTシャツを中国で売りたい場合、『藤井貴彦』の商標権を持つ人に何%か権利使用料を支払う契約を結ぶということです」
藤井アナウンサー
「私の名前が勝手に登録されているのに、それでお金を払わないといけないんですか?これは驚きですね」
加納解説委員
「もう1つの狙いは、商標権の売却です。仮に藤井さんが本腰を入れて中国で『藤井貴彦Tシャツ』を売るビジネスをしたい、『藤井貴彦』の名前も自由に使いたいとなった場合、商標権を持っている人から買うことができます。この売却で儲ける狙いです」
「実際、過去には日本企業が数千万円で商標権を買った例があったそうです」
徳島アナウンサー
「そうなると、先ほどの企業もいつか中国で大谷翔平フィーバーが起きた時に高く商標権を売ろうという目論見があるのかなと思ってしまいますね」
■「宮本武蔵」も…相次ぐ人名申請
加納解説委員
「こうした狙いで、中国ではブランドや人名などさまざまな名前が申請されています。今年1月に申請されたのが『宮本武蔵』です。歯磨き粉や湿布などに使う目的です」
市來玲奈アナウンサー
「二刀流という意味では共通しているのかな…」
加納解説委員
「さらに、日本の総理大臣の『岸田文雄』もあり、ビールや炭酸飲料に使う目的で申請されています」
刈川キャスター
「もし売られていたら、岸田総理と何かゆかりがある商品なのかなと勘違いしてしまいそうなのですが、これは実際、登録は可能なんですか?」
■弁護士「著名人かどうかがポイント」
加納解説委員
「日本で同じようなことが可能かと遠藤弁護士に聞いたところ、日本では申請はできても著名人だと登録が認められないそうです。では中国ではどうなのか。ここからは『登録される可能性も?』というポイントについてみていきます」
「『大谷翔平』の4文字は商標登録されてしまうのかどうか、遠藤弁護士は『登録される可能性はある』と指摘します。申請したら審査の過程があるわけですが、日本と同じように判断材料として『広く知られている著名人かどうか』がポイントになるそうです」
「著名人の名前と判断されると、その時点で本人の同意が必要になり、申請は通りません。これを踏まえて大谷選手の名前がどうかというと、中国で誰もが知っているわけではないため、審査官が大谷選手を知らない場合は登録されてしまう可能性があるといいます」
■時計などで「YOASOBI」登録
「実際に、日本で誰もが知っている人物の名前が中国で既に商標登録されています。グラスや皿で『徳川家康』、化粧品やシャンプーで『小池百合子』、服や帽子、靴で『新垣結衣』、アクセサリーや時計で『YOASOBI』などがあります」
徳島アナウンサー
「YOASOBI さんは今世界中で人気ですから、中国でライブグッズを作ろうと思った時に、この商標登録が壁になってしまうかもしれないということですよね」
加納解説委員
「その可能性もありますよね」
藤井アナウンサー
「早い者勝ちで、登録した者勝ちじゃないですか」
■「悪意性がある」で登録取り消しも
加納解説委員
「そうなんです。ただ、遠藤弁護士によると『大谷翔平』の名前が万が一登録されても、取り消しとなる可能性もあります。大谷選手本人や所属チームなどが希望すれば、登録から5年以内に取り消しを求める無効請求ができます」
「さらに、今回申請した中国企業は『悪意性がある』と判断される可能性が高いということです。高級ブランドのエルメスの中国語と同じ文字が使われたものを過去に申請していて、認められませんでした」
「同じように、海外ブランドに似た文字の申請がこの企業にはいくつもあり、遠藤弁護士は、こうした前例から大谷選手を知らないと主張しても、意識している、悪意性があると判断されて登録を取り消しできる可能性が高いということです」
「いずれにしても、本人の名誉を傷つけるような結果にならないでほしいと思います」
(2024年2月28日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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