【#みんなのギモン】原発処理水 韓国で「子どもに被害が…」日本以上に不安まん延のワケ

韓国で、福島第一原発の処理水放出をめぐり不安感が強まり、最新の世論調査では8割の人が「心配」だと答えています。なぜ今、韓国でこれほど動揺が広がっているのでしょうか?じつはその裏で、大手メディアの視聴率主義や怪文書の存在も。
■「性能懸念」「故障」…相次ぐ “ネガティブ報道”
7月3日、韓国の公共放送KBSの「ニュース9」。メインキャスターが「汚染水」と表現して、こう伝えました。
「今年の夏、猛暑や大雨以外にも、まもなく日本が放流することになっている福島の汚染水を心配する方も多いです」
韓国の大手テレビや新聞は今、福島第一原発の処理水放出に関するニュースを連日、トップ級で伝えています。日本での報道ぶりと比較すると、その扱いははるかに大きい印象です。ただ、その内容は…。
「放射能測定器の性能に懸念も」(6月20日・MBC)「海水の放射能監視装置に故障が多い」(7月1日・KBS)「処理水放出でガンの発症率が高まる可能性があるとして、保険会社がガン保険の電話勧誘を進めている」(6月29日・聯合ニュース)
処理水の放出に対し、視聴者や読者が不安感を高めかねない報道が韓国国内で連日行われているのが実情です。しかしよく見てみると、根拠が明確に示されていなかったり、1人の議員の主張によるものであったりします。
■“数字のマジック”はどこから来たか?
話題となっている「塩の価格高騰」。――ここでも疑問が生じます。発端は、韓国のテレビ局1社が「処理水放出に懸念を抱く人が増え、天日塩の価格が平年より6割以上、高騰している」と報じたことでした。すると、翌日から他のテレビ・新聞も追いかけるようにほぼ同じ内容を相次ぎ報じました。
ただ、問題は「6割高騰」とした数字です。根拠にしたとみられる韓国農水産食品流通公社の調査データを調べると、去年、すでに小売り価格は物価高などの影響で平年より5割ほど上がっていました。去年から今年にかけても1割ほど上昇していましたが、生産業者に取材をすると、その理由は天候不良による生産量の減少と見られることがわかりました。
それを「平年より6割以上、高騰」と表現し、福島の処理水放出と関連づけて報じたことで不安を高める結果になったとみられます。実際にソウルの大手スーパーでも一時、陳列棚がほぼ空になって購入制限がかかり、産地では塩の窃盗事件まで起きました。
こうした“数字のマジック”は他にもあります。
韓国のテレビ・新聞が相次ぎ報じたのは「日本産の海産物の輸入量が減少した」とするニュース。税関当局が発表した5月の日本産海産物の韓国への輸入量が前年に比べて30%減り、処理水放出と関連づけて「日本の水産物への懸念が高まっていることと関係しているとみられる」とする内容です。
ただ、こちらもデータを見てみると、去年と比べると輸入量は減っているものの、前月(4月)と比べるとむしろ増えています。こうした報道も不安感を高めることにつながっています。