処理水“放出”安全性は?――IAEA が報告書「放射線の影響は無視できる」「安全基準に合致」 一方、香港の鮮魚店「できるだけ売らない」、中国でデマ
IAEA(国際原子力機関)事務局長が4日、福島第一原発の処理水の安全性に関する報告書を岸田首相に渡しました。
報告書では処理水の放出計画について「安全基準に合致」と評価。一方、周辺国では日本の魚介類の買い控えなどの懸念やデマが広がっています。
香港にある鮮魚店を訪ねました。
サケやイクラ、カキなど販売している魚介類の約6割が日本から輸入したものだといいます。店主は「日本の魚は結構人気があります。みんなが信頼しています」と言います。
日本の水産物の輸出額を見ると、香港は中国本土に次ぐ2位です。
一昨年以降、福島・茨城・栃木・群馬・千葉の5県からの輸入についても、条件付きで認めています。ただ鮮魚店の店主は「海産物が汚染されるのを心配しています」と漏らします。
この店主が話していたのは、福島第一原発にたまる処理水の放出についてです。
処理水の量は、6月29日時点で保管用タンクの容量の97%に達していて、放出に必要な工事が完了しました。
そして4日、大きな動きがありました。
岸田首相が、IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長から、処理水を海に放出する計画について安全性などを調査した報告書を受け取りました。
グロッシ事務局長
「(報告書は)科学的かつ中立的なもので、(日本が)決断を下すのに必要な全ての要素を含んでいるでしょう」
報告書は、処理水の放出計画を「IAEAの安全基準に合致している」と評価した上で、「人々や環境に与える放射線の影響は無視できる程度だ」と結論付けました。
日本の魚を多く輸入する香港。ある市民は処理水放出について「そこまで敏感になる必要はないと思う。輸入してきた物は厳しく検査されるし、もし検査されなかったら、香港政府が監督管理を全うしていない(という)問題です」と話しました。
しかし鮮魚店の店主は「(放出があれば)消費者の健康を考えて、日本の海産物はできるだけ売らないことにします」と言いました。
香港政府は、処理水が放出された場合、福島県周辺の魚介類を禁輸の対象にすることを検討するといいます。
処理水を“汚染水”と呼び、海への放出に反対してきた中国では、悪質なデマによる風評被害も出ています。
発端は、「日本製の化粧水の製造工場がある地域に放射性物質を含んだ木片が放置されている」(『財界新媒体』)というデマでした。
これを受けて6月以降、SNS上では「幸いなことに、いくつかまだ未開封だったので返品した」といった、日本の化粧品を買い控えるとの書き込みが相次ぎました。
日本企業側は、中国メディアの界面新聞の取材に対し、製品の安全性を保証する声明を出すなど、対応を迫られる事態になりました。
政府はIAEAの報告書を踏まえ、処理水の具体的な放出時期を最終判断する考えです。
(7月4日『news zero』より)