中国が“汚染水”と反発 原発処理水の海洋放出…悪質なデマで日本製品の“買い控え”も
岸田総理大臣が、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長と面会し、福島第一原発の処理水の安全性に関する報告書を受け取りました。放出をめぐっては、日本の魚介類の買い控えなど海外で懸念が広がっています。
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グロッシ事務局長の来日で、処理水の放出がヤマ場をむかえています。
IAEAグロッシ事務局長 4日正午すぎ
「今回は重要な章です。原発処理水に関しても協議します」
先月26日、福島第一原発の沖合では放出に向けた工事が最終段階を迎えていました。
海底トンネルの終点は、沖合1キロメートルまで掘られ、コンクリート製の蓋が沈められていました。ここがまさに処理水を出す放出口となります。
準備が進む中、懸念されているのが周辺国の反応です。処理水を“汚染水”と呼び、放出に反対してきた中国。SNSでの悪質なデマによる風評被害もでています。先月以降、SNS上では日本の化粧品について、買い控えるとの書き込みが相次いだのです。
中国のSNS
「幸いなことに、いくつかまだ未開封なので、返品しようと思います」
発端は「化粧水の製造工場がある地域で放射性物質を含んだ木片が放置されている」というデマ。界面新聞の取材に対し、企業側は製品の安全性を保証するための声明を出すなどの対応を迫られる事態になりました。
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こうしたデマを防ぐためにも重要なのが、適切な情報発信です。
今年2月に行われた東京電力の内部会議では、周辺国などの理解を得るため、海中のトリチウム濃度などのデータを速やかに公表していく態勢を整えていました。
東京電力 廃炉コミュニケーションセンター 伊藤 功さん
「すぐにリリースできるように、翻訳の準備を事前に情報共有するので進めといてください」
英語、韓国語、中国語に加え、東電が重要視していたのが香港向けの情報です。
東京電力 廃炉コミュニケーションセンター 伊藤 功さん
「今準備している香港繁体字の進捗(しんちょく)の確認をしたいと思います」
東京電力 グローバルコミュニケーショングループ 永岡 彩花さん
「いま福島県産の輸入規制の緩和というものに取り組んでいて、香港の方々にも母国語で、正しい情報にアクセスできるような環境をお届けしようと」
処理水の放出による影響が、最も大きいとみられているのが香港です。中国本土に次いで、日本の水産物を多く輸入している香港。日本の魚介類を扱う店が多く立ち並んでいます。
香港市民
「いつもは北海道産のものをよく食べています。魚、貝、カニが好きです」
――日本の寿司好きですか?
子ども
「ボールみたいなのが好き」
販売している魚介類の約6割が日本からのものだという鮮魚店の店主は…
店主
「日本の魚は結構人気がある。みんなが信頼している」
その一方で…
店主
「まだ心配してないけど、もし放出したら心配です」
すでに日本からの魚介類の購入を控える客も出ているといいいます。香港政府は、処理水が放出された場合、福島県周辺の魚介類を禁輸の対象にすることを検討するとしています。
この日、日本産の海産物を購入した客は…
日本産の海産物を購入した客
「そこまで敏感になる必要はないと思う。輸入してきたものは何度も検査される。もし検査されなかったら、これは香港政府が監督管理を全うしていない問題だ」
市民を対象にしたアンケートでは、8割近くが処理水放出に反対し、放出が行われた場合、放射能検査を強化するよう求めています。
規制が強化されれば日本の漁業関係者にとっては、大きな打撃となります。全漁連の会長は…
全漁連・坂本会長 先月22日
「これは風評の端的な例だと思う。ああいう風に報道や(香港)政府が表明したとなれば、あっという間に香港向けに輸出する魚の値段が下がる」
情報を公開し、海外の風評被害をどれだけ抑えられるかが問われています。