【コラム】「皆既日食」アメリカ横断(前編) 晴天はどこ…? 予報士記者が明かす取材のウラ側
2024年4月8日に北米の広い範囲で「皆既日食」が観測された。日食を取材するのにベストな気象条件は、どこか? 地図と天候をにらみながらの取材ポイント選定のウラ側を、気象予報士でもある取材記者が明かす。
(NNNニューヨーク支局長・気象予報士 末岡寛雄)
協力:平井史生 気象予報士
■地図と天気図をにらめっこ…皆既日食が撮影できる場所は?
4月8日、メキシコからアメリカ、カナダの南東部という広い範囲で「皆既日食」が観測された。部分日食を観測できる機会は多いが、夜のように暗くなる皆既日食を観測できる機会は希少だ。2012年5月には東京でも、太陽の大部分が月に隠れて輪のように見える「金環日食」が観測された。筆者も当時、自宅のベランダから輪っかになった太陽を見上げたが、食のピークでも「意外と暗くはならないな…」と拍子抜けした。
それもそのはずで、太陽の明るさは、なんと満月の40万倍にものぼる。太陽が99.99%欠けても、満月よりもまだ40倍、明るいのだ。99.99975%欠けて、ようやく満月と同じ明るさになるため、金環日食は“形のよい部分日食”で、周囲が漆黒となる皆既日食とは全く違う。
今回、部分日食はアラスカとハワイを除くアメリカほぼ全土で観測されたが、皆既日食はメキシコからアメリカを横断してカナダ南東部に至る帯状のエリアのみ。どこが良い気象条件となるのか。地図を見ながらポイントを探し始めることにした。
■【「皆既日食」3か月前】4月の晴天率が高いのは?…気象条件を“予想”!
皆既日食を観測するのに最も適した天候――それは言うまでもなく太陽がきちんと見える「晴れ」である。ニューヨーク周辺の4月は日本と違って雨の日が多い。筆者は気象予報士“資格”は保持してるが、天気図と毎日にらめっこして予報をはじき出す訓練を最低1年はしないと、まともな予報はできず“ペーパー予報士”でしかない。このため、東京で日々お天気を報じている平井史生気象予報士に連絡をとり、「4月上旬のアメリカの晴天率」を調べてもらった。
平井予報士によると、4月の降水量の平年値をみるとテキサス州西部が雨が少ないとの予想。雨が少ないステップ気候に分類される場所だという。一方で、平原が広がるテキサス州とその周辺は、ロッキー山脈を越えた上層トラフ(気圧の谷)が深まり、上空の寒気とメキシコ湾からの暖かく湿った風がふれあうため、竜巻街道とも言われ、天候が悪化する懸念もあるという。
平年の予想から、第1候補を「テキサス州ダラスの西付近」、第2候補は観光客がたくさん集まりそうな「ナイアガラの滝」を検討することにした。