アメリカ軍の撃墜に抗議も…中国の“偵察気球”進路や狙いは? 「白い物体」過去に宮城県でも
アメリカ軍の戦闘機がアメリカ本土上空を飛行していた中国の“偵察気球”を撃墜したことについて、中国政府は北京にあるアメリカ大使館を通じて、正式に抗議しました。“偵察気球”の飛行ルートや、狙いなどについて詳しく解説します。
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今回、撃墜された中国の“偵察気球”は、白いバルーンの下にソーラーパネルのような板状の装置がついた物体です。関係者によると、全長はスクールバス2~3台分で、プロペラを使って操縦することも可能だということです。
アメリカ国防総省の高官によると、“偵察気球”の飛行ルートは、先月28日にアメリカ・アラスカ州アリューシャン列島の北の防空識別圏に侵入し、30日に、いったんカナダの空域に入ったのち、31日には再びアメリカ北西部のアイダホ州の上空に現れました。今月1日にはモンタナ州へ移動し、その後、4日午後に南部サウスカロライナ州沖の領海の上空で、アメリカ軍の戦闘機がミサイル1発を発射し気球を海に撃墜しました。
“偵察気球”の狙いについて、現代軍事戦略に詳しい防衛省防衛研究所の高橋杉雄室長は、「核施設に関する情報収集だった可能性」を指摘しています。“偵察気球”が通過したモンタナ州には、核ミサイルが配備されている空軍基地があるということです。
なぜ、衛星ではなく気球だったのかについて、高橋室長によると、衛星だと通過時間をアメリカ側に把握されているため、情報収集を制限されやすいといいます。一方、気球では、時間や場所を悟られずに飛ばすことができ、さらに1か所に長い間とどまって情報収集をすることが可能だということです。また、衛星よりも地面に近いところを飛行するため、より精度の高い情報が得られることが考えられるといいます。
謎の気球は、2020年に宮城・仙台市でも確認されていました。
宮城県が調査したところ、白い物体には十字型の部品と2基のプロペラがついていました。アメリカを飛んでいた気球と比較すると、板状の部品がついているところが似ています。宮城県は当時、この物体の所有者や目的は「不明」と結論づけていました。
高橋室長によると、2つの大きさや形などが似ていることから、中国のものと、同様である可能性もあり、「日本で何かしらの情報を偵察した可能性」を指摘しました。