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“処理水放出”の対抗措置か 中国で新たに日本の菓子なども通関に遅れ…日系ラーメン店“食材が手に入りにくい”

2023年7月28日 19:02
“処理水放出”の対抗措置か 中国で新たに日本の菓子なども通関に遅れ…日系ラーメン店“食材が手に入りにくい”

福島第一原発の処理水をめぐり、中国が日本からの水産物の全面的な放射線検査を始めています。新たに、日本の菓子なども通関に遅れが出はじめ、現地の飲食店からは困惑の声があがっています。中国・大連で日本の商品を専門に扱う輸入業者や、日系ラーメン店を取材しました。

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世界有数の国際貿易港を擁する中国東北部の大都市「大連」。海鮮市場には新鮮な魚介類がどっさりと並べられています。しかし、以前は見かけた日本からのマグロやホタテは見あたりません。今月から強化された、税関当局による放射線検査の影響で、日本の海産物の輸入が事実上ストップしているのです。

ことの発端は、福島第一原発の処理水の海洋放出計画です。処理水は、放射性物質「トリチウム」の濃度を環境基準値よりも大幅に薄め、この夏にも放出される予定になっていますが、中国はこの計画に強く反対し、すでに日本の海産物への全面的な放射線検査を始めたのです。

さらに、影響は海産物をこえてひろがっています。

大連で日本の商品を専門に扱う輸入業者を取材しました。油や醤油、お菓子など日本の商品の数が格段に減っているといいます。業者によると、中国で処理水放出への懸念が高まった4月ごろから輸入が滞るようになったということです。

日本商品の輸入業者
「以前、通関にかかったのは2週間以内でしたが、今は1か月半もかかります。今は通関が厳しくなり、商品を持っている同業者で分け合っている状況です」

大連には多くの日本人が住み、日本料理店が並ぶ通りもあります。今週オープンしたばかりの日系ラーメン店を訪ねました。

「寅一」店主・弓削幸二さん
「北海道産の昆布。かつおですね、こういったものは鹿児島産。突然こういう状態になって、入らない食材も出てきたので」

スープのだしに使う食材が手に入りにくくなっているといいます。

「寅一」店主・弓削幸二さん
「中国産に変わると微妙に塩分が高かったり、味が出ないこともあるので、試行錯誤しながら葛藤してます」

早ければ3か月ほどで、かつお節などの在庫が切れる見通しで、対応に頭を悩ませています。

日本の商品の仲買を行う北京の企業には、通関から“ある連絡”があったといいます。

日本商品扱う「京石」 姜東晧代表
「一部の商品について、事前に放射線検査の証明書を日本側企業に用意してもらった方が良いと、注意喚起されました。例えば、納豆のたれには、かつおの成分が入っています」

納豆のたれに、かつお節が含まれるため、検査が必要だと言われたというのです。

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中国の国営放送は、処理水放出について批判的な論調で連日、報じています。

中国中央テレビ(25日放送)
「日本メディアの世論調査では、岸田内閣の支持率は底をついています。『核汚染水』の放出のやり方などで、現政権に対する国民の信頼が危うくなった(と報じられている)」

こうした中、お隣の韓国では27日、尹錫悦大統領が海鮮市場を訪れた際、処理水放出と海産物に対する国民の懸念を払拭しようと、ある行動に出ました。

韓国 尹錫悦大統領
「一度つかんでみましょう」

水からあげられた穴子をわしづかみにしたのです。金建希夫人も少し驚いたような表情を見せていました。とらえた穴子を、その場で調理し食べてみせ、安全性をアピールしました。