×

台湾に忍び寄る“中国の影” インフルエンサーや芸能界に“誘い”が…

2024年7月23日 20:50
台湾に忍び寄る“中国の影” インフルエンサーや芸能界に“誘い”が…

中国による台湾侵攻を想定した年に1度の大規模な避難訓練が、頼清徳政権の下で初めて行われました。中国の圧力が強まる中、台湾では最近、インフルエンサーら有名人にある“異変”が起きています。その背後には中国の影がありました。

23日、台湾で行われたのは、中国軍の攻撃を想定した大規模な避難訓練です。

渡辺容代記者(台湾・台北)
「今、防空警報が聞こえてきました。防空警報が鳴り響いています」

屋外に出ることは禁じられ、警察官らの誘導に従わない場合は、日本円で14万円以上の罰金が科される可能性があります。台湾の全ての市民を対象に行われるこの訓練は、海外からの旅行客も対象です。

背景にあるのは、高まる中国の軍事的圧力です。中国は今年5月に就任した頼清徳総統を「台湾独立派」とみなし、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施。対話を拒む姿勢です。

その台湾で今、波紋を広げているのが、中国からとみられる若者を狙ったある“誘い”です。美容に関する情報などをSNSで発信し、約4.8万人のフォロワーを抱えるPoppyさんに、2022年、外国の広告会社を名乗る人物から突如、メールが届いたのです。

「一つ特別なご依頼です。中国を褒める内容を投稿してください。極端すぎる言論は求めません。もし興味があれば、ほしい報酬の金額を教えてください」

メールの発信元は見知らぬアドレスでしたが、中国で使われる簡体字で書かれていました。

台湾のインフルエンサー Poppyさん
「とても驚きました。(中国と距離を置く)私の政治的立場は分かりやすい。逆に中国のいい話を言わせようとしている。これはひどい話」

複数のインフルエンサーにあったという中国からの“誘い”。Poppyさんは不安を感じているといいます。

台湾のインフルエンサー Poppyさん
「侵略される不安がある台湾ではなく、子どもには安全で平和な台湾で成長してほしい」

その“誘い”は台湾の芸能界にも…

台湾の歌手 祈さん(中国SNS)
「こんにちは、私は台北から来ました」

台湾の歌手・祈さんは先月、友人に誘われ、中国で開催された研修会に参加しました。中国メディアの取材も受け、研修会の様子をSNSに投稿したところ炎上。祈さんのSNSには「中国共産党にこびている」「これは共産党による統一のためのイベントだろう」との書き込みが投稿されました。

ただ、祈さんは…

台湾の歌手 祈さん
「異なる意見はあります。悲しいし、意味のない争いをする必要もない」

今年5月には、台湾の人気バンドが北京で行ったライブで「私たちは中国人」と発言。中国寄りの立場を示す台湾の芸能人は増えています。

こうした事態に頼総統は…

頼清徳総統
「台湾の芸能人が中国で政治的意思を表明するよう迫られている」

台湾当局は、「中国が交流の名目で統一作戦の宣伝活動を展開している」と警鐘を鳴らしています。

   ◇

さらに今、活躍の場を求め自ら中国に進出し、中国側の主張に沿った発信をする若者もいます。

台湾の俳優 張さん
「中国で俳優をやるのは、やはり市場の大きさ」

4年前から中国に拠点を移した張さん。

台湾の俳優 張さん(SNSより)
「皆さん、こんにちは。私たちはなに? 中国人、そうでしょう?」

SNSでは台湾統一を支持する姿勢を示しています。

台湾の俳優 張さん
「中国、私の愛する祖国。私に幸福と快楽を与えてくれた」

張さんのファンは増え、中国政府が主催する台湾との交流を促すフォーラムにも招かれるようになりました。愛国的な発言や活動が評価されたのだと感じているといいます。

台湾の俳優 張さん
「中国政府は、私たちのような人気のある有名人の力を使って宣伝ができる。私がやっていることや話していることも中国政府の介入はないです」

   ◇

中国との向き合い方をめぐり、台湾社会の中で生まれる分断。統一を掲げる中国の揺さぶりに頼政権は対応を迫られています。