ウクライナ侵攻から1年 “出口なき戦い”で兵士に「PTSD」 増え続ければ“社会問題”に…
ロシアによるウクライナ侵攻から、24日で1年がたちました。徹底抗戦の構えを崩さないウクライナですが、長期戦によって大きな犠牲を強いられています。キーウ郊外にある墓地では、戦争の長期化とともに墓標も増え続けています。さらに医師は、戦争によって増え続けるPTSD(=心的外傷後ストレス障害)の患者が今後、深刻な社会問題になると懸念しています。
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ウクライナ・キーウ郊外にある墓地では、戦争の長期化とともに墓標も増え続け、おびただしい数にのぼっています。そして、いくつもの墓が、侵攻から1年たった今も身元不明のままとなっています。国連機関の発表による民間人のこれまでの死者は8000人以上。さらに、兵士は1万人以上が命を落としています。
それでも、抵抗を続けるため、今も多くの若者が戦闘に向かう準備をしています。21日、志願兵が集まって実弾の射撃訓練を行っていました。兵士のほとんどが、軍事侵攻前まで会社勤めなどをしていた一般市民です。
アメリカから来た“傭兵(ようへい)”が指導します。
アメリカから来た傭兵
「銃口を仲間に向けるなよ」
そして、傭兵が自らの体験をもとに語ったのは――
アメリカから来た傭兵
「いいか、私も撃たれて致命傷を負ったことがある。しかし、撃たれてから1分半は痛みを全く感じず、動くことができた。接近戦では敵に弾を当てるだけではダメだ。完全に敵の息の根を止めろ」
戦場は、生きるか死ぬかの極限状態であることをたたき込んでいました。
領土防衛隊の志願兵
「私たちは勝利だけを考えています。『勝利』『勝利』、それしかありません」
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ウクライナ東部や南部では、今も激しい戦闘が続いています。生き残ったとしても、癒えることのない傷を負う人も増えています。
ウクライナ西部のリビウにあるリハビリセンターでは、負傷兵らが治療を受けています。イリヤさんは、ウクライナ南部ヘルソン州で、戦車の操縦を担当していました。去年9月、戦場で全身に大やけどを負いました。
治療中の負傷兵のイリヤさん
「道路に地雷があり、私たちの戦車は地雷で爆発しました。しばらく意識を失って、目が覚めたとき、戦車は燃えていて…」
右足のけがは癒えず、私たちが訪れた日の午前に切断手術を受けたばかりでした。
イリヤさんのもとを訪れたのは、精神科医です。イリヤさんは爆発の瞬間がフラッシュバックし、体調を崩すことがあるといいます。PTSD(=心的外傷後ストレス障害)のカウンセリングも受けています。
治療中の負傷兵 イリヤさん
「毎日ではないのですが、眠れないことがあります…」
精神科医
「眠れないのは、戦場での記憶があるからですよね」
治療中の負傷兵 イリヤさん
「私は戦争について、ずっと考えているわけではないです。それでも、寝たいのになかなか眠れないんです…」
医師は、増え続けるPTSD患者が今後、深刻な社会問題になると懸念しています。
精神科医
「兵士が戦場で攻撃を受け続けることは、多くの精神障害を引き起こす要因になります」
ウクライナは、国民を総動員する態勢で抵抗してきました。大きな犠牲を伴いながら戦い続けています。