胡錦濤前主席“途中退席”人事に不満か?映像が語る“真相”は… 懸念深まる“習一強体制” 中国
中国共産党大会で極めて異例の出来事として世界を驚かせたのが、胡錦濤前国家主席が途中で退席する場面です。この退席の直前に壇上で起きたある場面を捉えていた映像が、さらなる波紋を広げています。
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22日、各国のメディアが、中国共産党大会の会場へ案内されるのを待っていました。
記者
「午前11時13分です。これから会場の中に入ります」
この日、メディアが案内されたのは、中国共産党幹部の選出が行われた直後でした。いち早く撮影を始めたメディアが捉えていたのが、中央に座る習近平国家主席の隣で、胡錦濤前国家主席と、当時、政権序列3位の栗戦書氏がなにやら言葉を交わしている映像です。
栗氏は胡氏の手元にあった白い文書に赤いカバーのようなものをかぶせ、なだめるように言葉をかけています。それでも胡氏が文書を見ようとしたのか、今度は栗氏が胡氏の文書を自分の手元に引き寄せ、渡さないようにしっかりと手で押さえました。
一方、胡氏と関係が深い李克強首相は、すぐ隣で起きている異変に一切反応せず、前をじっと見つめています。この時、事前の予想を覆す最高指導部からの引退が決まっていました。
対照的に、胡氏らのやりとりをじっと見つめる習主席。目線を後方に移すと、程なく男性スタッフがやってきました。習主席は自分の手元の文書を指さしながら、何か指示をしているように見えます。
その後、胡氏は習主席の手元の文書に手を伸ばしますが、習主席が素早く押さえつけ、阻止しました。
記者
「いま、胡錦濤氏が脇を支えられて席を立ちますね」
胡氏はスタッフに脇を抱えられ、不満げな表情を浮かべながら立たされます。
一連の騒動の発端になったとみられる文書。はっきりとは確認できませんが、幹部人事に関する資料だったのでしょうか。
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9年前、同じ会場で固い握手を交わし、権力を引き継いだ習氏と胡氏。今回の出来事は、その2人の間で起きました。
NNN中国総局 富田徹
「中国ではこうした政治イベントは全て根回しの上で行われる完全予定調和の世界なので、本当に異例の事態でした。この退場劇、中国SNSでは検索できなくなっていて、外に見せたいものではなかったことがわかります。ただ、当局から検閲されないツイッターなどでは、人事に怒った胡氏があの後の議案の採決で異議を申し立てるなど、何らかのアクションを起きそうとして退場させられたのでは、などの見方も出ています」
健康問題もささやかれていた胡氏の行動について、国営新華社通信は、「最近、静養中であったものの、党大会の閉幕に出席したいと強く主張していた」「体調が悪化したため退席した」と説明しています。さらに、最高指導部から外れた李克強首相と汪洋副首相を念頭に、「指導部の一部は自ら引退を申し出た」と報じました。
胡錦濤氏の流れをくむ幹部が一掃された場で起きた今回の出来事。異論を許さない習一強体制への懸念が深まっています。