"侵攻"への備え…進む台湾 防空壕は10万か所以上 中国・習主席は「武力行使放棄せず」
台湾では、中国による軍事侵攻への警戒感が少しずつ高まっています。中国の習近平国家主席が強硬姿勢を示す中、私たちは、有事への備えを進める市民を取材しました。
◇
台湾の離島・澎湖島では19日、中国軍の攻撃を想定した台湾陸軍の軍事演習が行われていました。中国では、共産党の党大会が開催される中、「侵攻を阻止する能力がある」とアピールした形です。
中国からの軍事的圧力の高まりを受け、台湾では来年の防衛予算は過去最高の約2兆7400億円となる見通しで、防衛力の強化を進めています。
◇
有事への備えは、人々の生活の"すぐそば"でも進められています。
坂井英人記者
「台北中心地の繁華街に来ています。この台湾政府が作ったアプリを開いてみますと、辺り一帯が同じマークで埋め尽くされています。これは、すべて防空壕(ごう)だということです」
実際、その防空壕に行ってみると、そこは広い駐車場になっていました。普段は、駐車場などとして使われることが多い台湾の防空壕。全部で10万か所以上あり、台湾の人口2300万人を大幅に超える8600万人以上を収容できるとされています。
台湾の母親
「学校側が(防空壕アプリの)資料を配って、親にダウンロードを呼びかけています」
台北市は9月、空襲に備えるための中高生向けのビデオを公開しました。そこでは、衝撃波に備える姿勢を細かく説明していました。
「空襲警報は長い音が1回、短い音が2回です。背中を丸めて、地面から離れます」
習近平国家主席は16日、中国共産党の党大会で、「平和的に統一する方針は堅持するが、武力行使を決して放棄することはしない」と述べました。
台湾民意基金会が行った8月の世論調査で、「中国が武力侵攻する『可能性がある』」と答えた人は39%で、2月の26.6%から、半年で約12ポイントも増えました。
◇
私たちは、台湾南部・高雄のある場所を訪ねました。中国軍と台湾軍の兵士の見分け方について、「昨年、中国軍にまた新たな変化がありました。まず軍服が変わりましたね」と教えていました。
これは民間人を対象にした、有事に備える講座で、他にも大ケガをした際の止血方法など、"実技"を交えて講義していました。
参加者(65)
「台湾は非常にリスクの高い場所なので、私たちはこうした知識を持たなければいけません」
今年3月以降に開催された講座はすべて満席で、今も3000人以上が受講待ちだということです。
講座を運営する「黒熊学院」何澄輝氏
「近頃、中国側は台湾への政治的・軍事的圧力が徐々に強くなっています。民衆がこの戦争のリスク、威嚇の圧力を感じて、心配が高まっています」
◇
そして、中には軍事侵攻に備える人もいます。台湾・新北市で、地元の市議会選挙に立候補している林秉宥さんの部屋の壁には、軍用機などのプラモデルがぎっしり並べられていました。しかし、ただの軍事ファンではありません。
林さん
「これは戦争時の準備です」
林さんは包帯や生理食塩水など、医療用品のバッグを見せてくれました。さらに、物々しい防弾チョッキやヘルメットは、実際に防弾性能があるといいます。
ウクライナ侵攻が始まった後、戦争への危機感が高くなったという林さんは、「中国軍が使っている銃弾に対応できる防弾チョッキに変えた」と話します。
さらに、家族のために緊急時の食料などをまとめたバッグも用意しました。
林さん
「台湾は島なので、逃げる場所はありません。自分で自分の家を守るしかないです」
台湾では、有事への警戒感が少しずつ高まっています。