北朝鮮・金正恩総書記の考えに“忠実対応” 地下鉄では摩訶不思議な変化も…
北朝鮮では金正恩総書記が韓国を「敵国」と位置づけ、南北統一をめぐり政策の転換を明言してから、さまざまな形で“統一”の考えを打ち消しています。執ようとも思える対応は“地下鉄の駅名”にも、摩訶(まか)不思議とも思える形で現れました。
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金総書記は2023年末、朝鮮労働党の重要政策を決める会議で、韓国について「アメリカの手先と統一問題を論じるのは、我々の国の格と地位に合わない」と言及。さらに「もはや同族関係ではなく、敵対的な国家関係に固着した」と強調し、韓国との南北統一に向けた協議などに応じない姿勢を明らかにしました。さらに2024年1月には「第1の敵対国」と位置づける方針を示しました。
南北統一とは、朝鮮戦争で分断された北朝鮮と韓国が、将来的に統一されるという考えです。同じ民族同士が統一に目指すことは、北朝鮮と韓国の“和平の象徴”ともされていました。金総書記はこの考えを否定することだけでなく、韓国を「敵国」とまで言及したのです。
「トップダウン」という言葉を体現するかのように、金総書記から政策の転換が示されると、北朝鮮はさまざまな形で“統一”の考えを打ち消し始めました。まず変化が確認されたのは、北朝鮮の韓国向けの宣伝サイトです。ホームページのトップ画面から過去の南北首脳会談などについてまとめられた記載が削除されました。
つづいて、変化は国営テレビにも…。放送で使われている朝鮮半島を示す地図。以前は朝鮮半島全体を色づけする演出が取られていましたが、それが北朝鮮だけを色づけする演出に。
2月に入ると、北朝鮮は南東部にある景勝地・金剛山の観光をめぐる特別法など、韓国との経済関係について定めた法律を廃止しました。
そして2月15日には、国歌の歌詞まで変更したことが明らかに。歌詞のうち、「三千里の美しいわが祖国」という部分から「三千里」の単語が削除され、「この世界 美しいわが祖国」へと変更されました。「三千里」は全長が1000キロほどの朝鮮半島全体を指す表現として用いられてきて、韓国の国歌にも出てくる単語です。
さらに変化は市民の生活の足にまで。首都・平壌を走る地下鉄には「統一駅」という名前の駅がありますが、その駅名が変わっていることがわかりました。
こちらは、北朝鮮にあるロシア大使館がSNS上に掲載した画像です。地下鉄の車内にある電光掲示板を撮影したものとみられますが、本来は「統一駅」だった場所の表示は「駅」としか書かれていません。駅名から“統一”を取り除いたものとみられますが、代わりの名称は付けずに「駅」とだけしているようです。
執ようとも言えるほどの変化を見せる北朝鮮。いずれも金総書記の政策転換が反映されたものとみられます。金総書記は、ことあるごとに韓国を敵視する発言を続けていて、トップの考えを忠実に示した変化は今後も続きそうです。