「次期戦闘機」第3国に輸出?――日本の「三原則」変更か “日本外し”に政府関係者が懸念「米の高い戦闘機を買い続けるしか」
イギリスやイタリアと共同開発する次期戦闘機について、自民公明両党が第3国への輸出を認めると合意する見通しです。日本には「防衛装備移転3原則」のルールがあるため、安全保障の大きな転換となる可能性があります。その背景やリスクを考えます。
■「もしトラ」で日本にも影響が?
有働由美子キャスター
「『もしトランプ氏が大統領になったら』が、にわかに現実味を帯びてきました。トランプ氏と言えばアメリカファーストなので、日本にも影響がありそうです」
「こうした中、日本の安全保障政策の大きな転換となるかもしれない動きがあります。次期戦闘機を第3国にも輸出することを認めると、自民公明両党が3月内にも合意する見通しであることが分かりました」
「殺傷能力も高い戦闘機を輸出することで、日本が結果的に戦争に加担することにならないか、そしてなぜ今、戦闘機の議論が行われているのでしょうか?」
■イギリス、イタリアと共同開発で合意
「次期戦闘機というのは、2035 年ごろに退役する今の F2 戦闘機の後を引き継ぐものです」
「軍事に詳しい笹川平和財団の小原凡司さんによると、複数の無人機と連携して、偵察や攻撃ができ、少ない数のパイロットで作戦の幅が広がるなど、最先端の攻撃力を持っています。政府はこれをもって抑止力につなげたい考えです」
「ただ、戦闘機の開発というのは数兆円規模の莫大なコストと最先端の技術が必要なので、日本はイギリスやイタリアと共同で開発することで一昨年 12 月に合意しています」
■「防衛装備移転3原則」どうなる?
有働キャスター
「ただ、それを第3国に輸出するというのは、日本ではできたのでしょうか?」
小栗委員長
「日本には『防衛装備移転三原則』というルールがあり、共同開発した装備品の第3国への輸出を現状、認めていません。ただイギリスとイタリアはこの戦闘機を一緒に開発する3か国だけではなく、他の国に輸出もして量産することで、生産コストを抑えたい考えです」
「『日本は輸出できない』と言ったら、イギリスとイタリアはどう反応すると思いますか?」
有働キャスター
「『では日本は外そうか』となる気がします」
小栗委員長
「ある日本政府関係者は、『共同開発するのにマーケットを持ってこないなら、日本はいらないと言われてもおかしくない。そうしたら結局、アメリカの高い武器や戦闘機を買い続けるしかなくなる』と話していました」
「少なくとも、最先端の主要な部分の開発や製造作業から外されてしまう可能性があります。そのため、政府と自民党としては、第3国にも輸出できるようにルールを変えた方が国益につながると考えています」
「与党の公明党は合意する見通しですが、『説明が足りない』という声も聞かれます」
■歯止めは?…自公合意の条件を検討
有働キャスター
「なし崩しに日本のやれることが広がっているような気がしますが、歯止めが必要ではないかと思います」
小栗委員長
「その点は公明党との間でも議論になっていて、輸出を認めるのは今回の次期戦闘機のプロジェクトに限ること、ウクライナなど紛争当事国への輸出は認めないことなどが、合意の条件として検討されています」
■辻さんに聞く…間接的な加害の可能性は
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「なし崩しになるのではないかという点は、私も不安に思います」
「日本が直接戦争に関わらなかったとしても、輸出した戦闘機が間接的に、あるいは巡り巡って人の命を奪う可能性がもしあるなら、平和国家としてのあり方、国際的な見られ方はまた一歩違うフェーズになるのではないかなと思います」
「例えば今、ガザの状況を見ていてイスラエル産のものを買いたくない、買わないという声もよくSNSなどで目にします。間接的にでも誰かの加害になり得ることをしたくない、と思っている人は少なくないのではないかと思います」
「安全保障環境は本当に厳しくなっていると思いますが、こういった感覚も忘れたくありません」
有働キャスター
「中国も軍事費を増額し続けていて、防衛のために必要というのは理解できるのですが、戦争はしないと誓ってきた日本が巻き込まれるリスクが高まる恐れはないのか、歯止めはどうするのか、私たち1人1人が関心を高く持たないといけません」
「そして政府は、国民が議論に参加できる土台作りや、納得のいく説明をしっかりしてほしいです」
(3月6日『news zero』より)