中国に“電気自動車の墓場” 空き地に大量の車両を放置 急速な普及も…競争激化で“廃業”相次ぐ
中国各地で“電気自動車の墓場”が出現しています。背景には、国を挙げての電気自動車普及策がありました。一部の都市では、すでに自動運転のEVバスも導入するなど、世界をリードする中国でみられた“陰り”とは…。
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私たちは中国東部の浙江省・杭州市へと向かいました。道路を走っていると、あちらこちらでEV(=電気自動車)がつける緑色のナンバープレートが目立ちます。
しかし、この町で“ある異変”が起きているといいます。2か月前に撮影されたSNSの動画には、白い車が無数に並んでいました。
動画より
「杭州市で1000台以上の電気自動車が空き地に放置され、草に埋もれているという」
中には草に覆われたものもあり、すべて電気自動車だといいます。
同じような状況は、別の場所でも起きていました。中国・広東省の東莞市で8月に撮影された動画では「まるで電気自動車の墓場のようだ」と伝えていました。
杭州市の動画にあった場所を訪れると――
記者
「ビルの隣に塀で隠されたように、たくさんの車が並んでいますね」
ずらりと並べられた車。よく見ると、どの車も新車なのかシートにカバーが掛けられています。ボンネットの隙間から草が生えた車もありました。
近くに住む人
「いつからだろう」
「1年以上はあります」
「一気に、これだけたくさんの車が運ばれてきたんです」
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こうした“電気自動車の墓場”は中国各地に出現しています。
SNS上では「たくさんの車を捨ててもったいないなぁ」「中古車として売ればいいのに」といった投稿がみられました。
“墓場”が増えているワケ。そこには、国を挙げての電気自動車普及策がありました。
中国では2015年ごろから電気自動車業界が急成長。去年までの約20年間で14倍ほどになっています。充電スタンドの設置数も2021年と比べて、今年6月までで2.5倍以上に増えました。
タクシー運転手
「(充電スタンドは)探せばどこでも見つかります。数キロごとに設置されていますよ」
中国の一部の都市では、すでに自動運転のEVバスも導入されています。
急速に進められてきた電気自動車への転換。政府の補助金が出るとあって、ガソリン車ではなく電気自動車を使ったカーシェア会社なども乱立しました。しかし、その結果、競争が激化して今年4月までに約2400社が廃業しました。
行き場を失った大量の電気自動車が、各地に“墓場”を生み出しているというのです。
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電気自動車市場に立ちこめる暗雲は他にもあります。
ガソリン価格が高騰する中、充電料金の安さが魅力だった電気自動車。しかし、ここへきて一部の都市では充電料金が2倍に高騰。これまで料金を安くするため出されていた補助金がカットされ、大幅な値上がりにつながっているといいます。
電気自動車への転換で世界をリードする中国でみられた“陰り”。
習近平国家主席
「世界が良くなれば中国が良くなり、中国が良くなれば世界はさらに良くなる」
“陰”を抱えたまま世界をリードしていくことはできるのでしょうか。