【専門家解説】世界的に崩れ弱まる『核のタブー』と「被団協にノーベル平和賞」の意義《長崎》
長崎大学核兵器廃絶研究センター=RECNAの中村 桂子准教授。
(長崎大学核兵器廃絶研究センター 中村 桂子准教授)
「今回のノーベル平和賞の受賞理由の中に『核のタブー』という言葉が繰り返し出てきた。この『核のタブー』が実際、今 崩れて弱まってきてしまっている」
核兵器をめぐる情勢は、厳しさを増していると指摘します。
(長崎大学核兵器廃絶研究センター 中村 桂子准教授)
「2018年頃から各国が実際に “いつでも使える状態の核兵器の数” を増やしている。数だけではなくてより能力の高い、より精密に相手を攻撃することができる核兵器の開発は、ますます進んでいる」
RECNAによりますと、世界9か国が保有している核弾頭の数は「1万2120発」で、去年より400発減少しましたが、老朽化したものを除いた “現役” の核弾頭は、2018年以降増加傾向にあります。
“現役” 核弾頭を最も多く持っているロシアは、ウクライナ侵攻を始めたおととし2月以降、核兵器使用の脅しを繰り返しています。
先月 ウクライナに対し、新型の中距離弾道ミサイルを使用して攻撃。
核弾頭は搭載していないものの、プーチン大統領は音速の10倍で飛行することから、迎撃は不可能だと強調した上で、「攻撃的な行動がエスカレートした場合、鏡のように対応する」と警告しました。
(長崎大学核兵器廃絶研究センター 中村 桂子准教授)
「今の行きつく先は何らかの形での核兵器使用であったり、人類の滅亡というところに行きつきかねない。本当に今かつてないと言ってもいいほどの危険な状況。ここから5年、あるいは10年というところはこれから先の人類の運命を左右するような重要な時代に入っていってるのではないか」
また、もう1つの “核大国 アメリカ” は、トランプ氏が次期大統領に。
“アメリカ第一主義” の姿勢が、国際社会の秩序を乱しロシアなどとの対立を深めるのではと懸念されます。
(長崎大学核兵器廃絶研究センター 中村 桂子准教授)
「残念ながらトランプ大統領は、アメリカとロシアの間で条約を作ってお互いに(核兵器を)減らしていくことに極めて消極的。国際法に基づく秩序というか、世界の枠組み自体が崩れていくような状況がさらに加速してしまうのではないかというのが最大の懸念。
選ばれてしまったものは仕方ないので、アメリカの市民と(核兵器廃絶への)関心を共有して、決して諦めず前に進んでいくことをやっていかなければいけない」
そんな中で、核兵器廃絶を訴え続けてきた “被爆者の取り組み” が評価された今年のノーベル平和賞。
“被爆者なき時代” が迫る中、今こそ被爆者の言葉に耳を傾ける必要があると話します。
(長崎大学核兵器廃絶研究センター 中村 桂子准教授)
「(世界の)大きな流れにどうやってくさびを打っていくか、止めていくかといった時に『核兵器が一体、私たちに何をもたらしているのか』という根本的なところにもう1回光を当てる。
それをする最大のチャンスが、このノーベル平和賞。
そして来年の “被爆80年” というところの気運の盛り上がり。今回の動きを一過性のものにしないというのが、使命だと感じている。
来年に入ると核兵器禁止条約の第3回締約国会議があるNPT(核拡散防止条約)の次の準備委員会もある。
どうノーベル平和賞で高められた機運を維持して、前につなげていくかが本当に大きな課題になる」