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【独自解説】北朝鮮のミュージックビデオがTikTokで260万再生の“大バズリ” 金総書記天才伝説「全弾命中!」 出頭したら一巻の終わり? “自首キャンペーン”の“罠” 

2024年5月17日 16:00
【独自解説】北朝鮮のミュージックビデオがTikTokで260万再生の“大バズリ” 金総書記天才伝説「全弾命中!」 出頭したら一巻の終わり? “自首キャンペーン”の“罠” 
新プロパガンダにはあの有名アナウンサーも「いいね」ポーズ

 北朝鮮で、異例とも呼べる事態が続出しています。韓流弾圧を掲げていたはずの当局が、国内の引き締めを緩和しているともとれる情報を入手しました。さらに、新プロパガンダがまさかの“大バズリ”。最新情報から金正恩政権の思惑を読み解きます。

北朝鮮の映像に合わせのダンスがSNSで大流行 金総書記を呼び捨てにする異例の歌詞とは?

 4月、北朝鮮で公開された金正恩総書記をたたえる宣伝用のミュージックビデオ「親しみやすいお父様(オボイ)」ですが、金正恩総書記を呼び捨てにするなど異例の歌詞となっていて、曲調もアップテンポの明るいものとなっています。

Q.歌の中での呼び捨ては以前にもあったということですが
(「コリア・レポート 編集長 辺真一氏」
「日本でいうと、親しみやすさを強調するためにファーストネームで呼ぶような感じです。金・正・恩の3文字は北朝鮮では全国民が尊敬する象徴のような捉え方だと思います」

 この曲に合わせてダンスなどをする動画を欧米の若者がSNSに数多く投稿し、中には再生回数が260万回を超える動画もあるということです。SNSでは、「この曲にはグラミー賞が必要」「完璧な曲を出した北朝鮮に行きたい」という声もあがっています。北朝鮮分析家の高麗大学 ピーター・ムーディ氏は、「この曲はABBAの曲調に似ている。軽快で耳なじみの良いオーケストラサウンドが際立っている」と分析しています。また、龍谷大学の李相哲教授は、「韓流に対抗するために作られた“韓国風”ミュージックビデオ。リズム・表現などに韓流との類似点がみられる」としています。BBCは「この曲を投稿している若者のほとんどは、弾道ミサイルを何十発も発射している金総書記をたたえる歌だと気付いていない」と報じています。辺氏によると「海外で注目されるのは(北朝鮮にとって)嬉しい誤算」だとしています。

Q.北朝鮮国内向けの宣伝映像が欧米でバズったというのは嬉しい誤算なんですか?
(辺氏)
「あくまでこれは国内向けですから、内容は全部朝鮮語です。それがTikTokに載ってこれだけ受けてしまったので、一番驚いているのは、金総書記自身・北朝鮮自身じゃないかと思います」

撃つ弾全弾命中!? 3歳で車を運転!? 金総書記天才伝説

 5月11日・12日、金総書記は狙撃兵の小銃を生産する国防企業を視察、自ら小銃の試し撃ちし、性能を確認しました。全ての弾が的の中心を打ち抜いている写真が公開され、「腕前のアピール」といわれています。SNSでは「オリンピックに出よう!その実力なら間違いまく金メダル!」という声がある一方「誰が見てもやらせ」という声もあります。辺氏は「金総書記は“軍事マニア”できても不思議ではない」としています。一方、李教授は「『金総書記はなんでもできる天才的指導者』と住民に植え付けるための写真。誰も本当に命中させたか証明しろと言わないし、言えない」と指摘しています。

(辺氏)
「金総書記は、金日成総合軍事大学を出ています。彼は2023年8月にもこの工場を訪れて試し撃ちをしています。この時は的の写真や映像は出ませんでした。今回2回目なんですが、おそらく1回で全部命中させたということではなく、2回3回やってその中で当たったと見ています。金総書記が製品の合格を承認しないといけないので、自ら撃って当たったというのを証明しているのだと思います。金総書記は、戦車や潜水艦、ミサイル発射台にまで乗っている“軍事マニア”なので、今回の件もウソではないと個人的には思っています」

 北朝鮮の歴史教科書に金正恩総書記は「3歳のとき初めて銃を撃つ」「9歳のとき10発の銃弾を撃って正確に目標に命中させる」や「3歳から運転をはじめ険しい道を疾走」「200km/hの超高速ボートを専門家よりうまく操縦」と“伝説”が載っているそうです。また、父親の金正日総書記は、ゴルフの初ラウンドで「11回のホールインワン」「(世界記録?)38アンダーを記録」したということです。

(辺氏)
「これは全部ウソでしょうね。北朝鮮の指導者は『偉人だ』ということをPRしています。偉人イコール天才だ、何をやってもずば抜けていると言いたいんじゃないでしょうか」

Q.「偉大なる指導者」や「親しみやすいお父様」など歴代の指導者についていた敬称を金正恩総書記は全部自分のところに持ってきているように見えますが?
(辺氏)
「これから、自身の神格化を始めるということで、祖父や父親の修飾語を全部自分が引き継ぐというかたちです。4月の祖父・金日成主席の『太陽節』の『太陽』も外してしまいました。これからは、金正恩自らが太陽だと国民にPRしていくんじゃないでしょうか」

「正直に告白すると処罰を免除します」北朝鮮の“自首キャンペーン”の“罠”

 韓国のシンクタンクが入手した北朝鮮国内で流れている映像によると、今北朝鮮では“自首キャンペーン”なるものが行われていて、韓国文化を楽しんだ市民に対し、「正直に告白することで処罰を免除します」としているそうです。これまでの北朝鮮は、2020年に「反動思想文化排撃法」が制定され、韓国のドラマや映画を広めた場合、最高で死刑、視聴しただけでも最長で懲役15年、韓国の言葉も禁止で男性パートナーに「オッパ」という言葉を使っただけで最高懲役2年などとなっていました。過去には16歳の少年2人が韓国のドラマや音楽ビデオを見たり広めたりした罪で、数百人の学生の前で手錠をかけられ、12年間の重労働に従事する刑に処せられたこともありました。

 自首を認める条件は、「いつ・どこで・誰からもらったのか?誰と一緒に見たのか?使用・密売したのか?」などを詳しく正直に話なければなりません。自首した人は100人以上いるということですが、韓国メディアによると「自首した市民は当面は処罰を免れるが、当局の監視下に置かれ捜査やプロパガンダに利用される」としています。辺氏は「北朝鮮による“フェイクキャンペーン”」だと指摘しています。李教授は「厳罰だけでは無理なので緩和した。北朝鮮などでよく使う手。しかし、後から罰を与えるときに使われる手なので、効果は期待できないのでは」と話しています。

Q.結局、密告しないといけないということですし、本当に処罰されないかも怪しいですよね?
(辺氏)
「北朝鮮で自首というのは考えられません。自首したらその瞬間に一巻の終わりだと思います。北朝鮮という国はそれほど寛大ではありません。一旦祖国を裏切った者は絶対に容赦しません。1度裏切った者は必ず2度裏切るという考えがあります。以前も北朝鮮はこの手の自首キャンペーンをしたことがあります。脱北した女性をテレビに出して、『騙されて韓国に連れていかれた。韓国に行ってみたら地獄のようなところだった。今回戻ってきたら国は許してくれた』というような会見を1回だけさせました。しかしその後の動静は伝わってきません。北朝鮮の国民も、今回の“自首キャンペーン”の様な手に乗るほど愚かではありません。北朝鮮当局が100人も自首したというのは、明らかに囮・罠だと思います」

Q. TikTokで流行ったミュージックビデオの様にポップアップな曲にしたりするのは、韓国や中国経由などで西側の文化の流入は止めらえないということでしょうか?
(辺氏)
「北朝鮮は、歌というとどうしても軍歌に近いような革命歌なのです。若い人は流行りの歌を好みます。それが韓流の歌や曲・映画なのです。これらが北朝鮮に流入すると、若い人たちが西側に汚染されます。それは体制の崩壊につながります。どこの国でも体制の崩壊の引き金を引くのは若い人たちです。そこをきちっと統制しないと4代目のジュエ氏の体制にも影響を及ぼしかねないということで、若い人を取り込むためにこういう様なプロモーションビデオや音楽を作っているんじゃないかと思います」

(「情報ライブミヤネ屋」2024年5月16日放送)

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