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“電子派”増える中……街から消える書店を国が支援ナゼ? 20年で半減、「書店なし」市区町村は4分の1【#みんなのギモン】

2024年3月7日 13:56
“電子派”増える中……街から消える書店を国が支援ナゼ? 20年で半減、「書店なし」市区町村は4分の1【#みんなのギモン】
厳しい経営を迫られ、街から消えていく書店。現状に危機感を持った経済産業省が、「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げて支援に乗り出します。電子出版物が増える中、紙やリアル店舗ならではの魅力もあります。書店では多彩な取り組みが始まっています。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「街から消える書店 なぜ支援?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●紙の本離れ 電子じゃダメ?
●書籍だけじゃない 生き残り戦略は

■2003年度に2万あった書店数は今?

加納美也子・日本テレビ解説委員
「経済産業省は5日、全国の街の書店を支援するため、『書店振興プロジェクトチーム』を立ち上げると発表しました」

「日本出版インフラセンター調べでは、2003年度に2万880あった書店数は、今年2月時点では1万960と半分ほどに減っています。全国の市区町村では1741のうち456で書店がないといいます。その数は全体の4分の1にも上ります」

■中小書店の経営を圧迫している背景

藤井貴彦アナウンサー
「ショッピングセンターやデパートに入った大型の書店がそばにありますが、街の書店はどこにあるかな?と考えると、ないですね」

加納解説委員
「そうなんです。私の身近にもなくて、子どもの本を買う時に、近いエリアにないんですよね。経産省によると、週刊誌や月刊誌の販売状況が芳しくなく、コミックも紙から電子出版へ移行していることなどが、中小書店の経営を圧迫していると考えられるそうです」

■紙派? 電子派?…街の人の声は

加納解説委員
「実際、街の人たちはどうやって本を読んでいるのか聞いてみました」

40代主婦
「電子になると思いますね。(紙は)雨の日とかわざわざ買いに行ったりとか、めんどくささはあるかなと」

20代大学院生
「紙ですね。寝る前に読むことが多いので、ブルーライトとか寝つきにくくなる電子だと…」

30代会社員
「本は紙の媒体で読んでいます。漫画だと何十巻とあるから、引っ越すってなったら(紙だと)量が重いから電子にしてます」

加納解説委員
「このように街で多く聞かれたのが、本やコミックをスマホなど電子で読むという声だったんですね」

藤井アナウンサー
「書店で本を買って袋に入れてもらって、それを小脇に抱えて、家にワクワクしながら帰る思いは、電子では味わえないですよね」

河出奈都美アナウンサー
「紙の本の良さもありますけれども、書店そのものの魅力もあるかなと思っています。買うものが決まっていない場合は、どんな本と出合えるかなっていうワクワク感、これを求めに行っている部分は私はあるかもしれませんね」

■本離れ? トータルの販売額は横ばい

加納解説委員
「出版科学研究所の『出版指標年報2023年版』などによると、出版物の推定販売金額の推移は紙では年々減っている一方で、電子では増えています。トータルの販売金額はほぼ横ばいということで、本離れが進んでいるかというと、そうでもなさそうなんです」

刈川くるみキャスター
「私も小説は紙で読みたくて、勉強したい本は電子書籍と使い分けているんですけれども、本のジャンルによって紙と電子の割合に差が出たりするんですか?」

■電子出版物全体の約9割はコミック

加納解説委員
「電子への移行が進んでいるのがコミックです。『出版指標年報2023年版』などによると紙のコミックの推定販売金額は減少傾向にありますが、電子のコミックは年々増加し、2019年以降は紙の販売金額を上回っています。今や、電子出版物全体の約 9 割を占めています」

藤井アナウンサー
「電車で、スマホで漫画読んでいる方はいっぱいいらっしゃいますもんね」

加納解説委員
「経産省はこの背景として、コロナ禍の巣ごもり需要の影響があるのでは、としています。徳島さんは『名探偵コナン』好きですが、紙派ですか?電子派ですか?」

徳島えりかアナウンサー
「コナンに関してはコミックスが 104 巻まで出ていて、本棚に入りきらなくなってしまったので途中から電子に移行したんですね。(電子書籍は)コミック1冊あたりも比較的安価なので、ポチッと買ってしまいがちなのかなと思います」

「ただこうして見ると、時代の流れなのかなとも思います。衰退していく産業は世の中に他にもある中で、なぜ今、書店を応援する流れがあるんでしょうか?」

■大臣「創造性が育まれる文化創造基盤」

加納解説委員
「なぜ?という声はネットでも多いんです。『需要がなくなった書店に税金を投入するのは無駄では』『図書カードを配布した方が本を買うのでは?』といった声も上がっています。では、なぜ書店を応援するのか」

「支援チームを立ち上げる経産省の斎藤大臣は『街中にある書店は多様なコンテンツに触れることができる場。創造性が育まれる文化創造基盤として重要で、こうした書店が激減している現状に危機感を持っている」と話しています」

■ネット書店の弊害と実店舗の魅力は?

「どういうことか、メディア業界に詳しいメディア激動研究所の水野泰志代表に聞きました。水野さんは『ネット書店で電子書籍やコミックを買うと、自分が見たい、知りたいものだけにアクセスする形になるので、世界が狭まってしまう弊害もある』と指摘します」

「一方で『さまざまな分野の本などが並ぶ書店にふらっと立ち寄ると、今まで興味のなかった分野の本や、人生に影響を及ぼすような1冊に偶然出合うこともある』と言います」

河出アナウンサー
「たまに書店に引き寄せられる時があるんですよ。今日行ってみようかな、っていう不思議な感覚が」

加納解説委員
「水野さんは、そういうところが書店の魅力でもあり、存在意義にもなっているといいます」

刈川キャスター
「特に書店ですと、その本の魅力を短い言葉で吹き出しにしてくれている時もあるので、思いがけない出合いがありますし、書店ならではだなと思いますね」

■書籍だけではない生き残り戦略の例

加納解説委員
「ただ、書店はこのままでいいわけではないんですね。ここからは、書籍だけじゃない生き残り戦略について考えます。書店側もさまざまな取り組みを始めています」

「東京・東久留米市にある『野崎書林』に並んでいるのは野菜です。年々売り上げが落ちたことから、4年前に農産物の直売所の併設を始めたといいます。経営者が農業もやっていたのと、本だと月に1回程度の来店ですが野菜なら毎日来てくれるという思いからでした」

「実際、直売所を始めてから本の売り上げが15%ほど増えた年もあったということです」

河出アナウンサー
「野菜を買ってそのままレシピ本を買ったりしたらいいかもしれませんね」

■ゴルフ練習場で「書籍販売」を支える

加納解説委員
「広島市にある『フタバ図書 TSUTAYA MEGA 中筋店』では去年12月、インドアゴルフの練習場が併設されました。この書店を経営する会社は経営が悪化したため3年前に事業を譲渡し、現在立て直しを図っています」

「成長が見込める分野と一緒に店舗を構えることで、事業の柱である書籍販売を支えていく方針だということです。ゴルフの練習のついでにちょっと書店に寄っていくという方もいるのではないか、と期待しているそうですね」

藤井アナウンサー
「河出さんから、野菜を売っているからレシピ本を買ってもいいんじゃないかという話がありました。ゴルフの練習をしてうまくいかないな、と悩んでいる時にゴルフの教科書のようなものをついでに買ったら、お互いにいいんじゃないかと思いますよね」

「本の電子化という流れはこれから止まらないでしょうが、本を実物で売るというのは根強く残ると思います。ひとつの文化として支えていくのは大切だと思います」

「本を書いた経験のある私は、本自体がその人のお宅にあるという存在感がとっても嬉しいんですよね。買ってくれたワクワクを演出できたら幸せなので、本は残ってほしいです。一方で、音声で聴かせる『オーディブル』もあります。多様化が進んでいくんですね」

加納解説委員
「経産省は今後、書店の経営者などから各書店の工夫や課題について聞き取りをして、支援策を考えていきたいとしています」

(2024年3月6日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

●あなたの身の回りの怒りやギモンをお寄せください。

お寄せいただいた情報をもとに日本テレビ報道局が調査・取材します。

#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html

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