20年で店は“半減”――消えゆく書店を「国が支援」へナゼ 「税金投入は無駄」…ネットでは厳しい声も 書店の魅力と将来は?
経済産業省が5日、書店振興プロジェクトチームを設置しました。書店の数は約20年で半減。若者が本を読んでいない現状は深刻で、書店経営は厳しさを増していますが、なぜ今、支援へ動き出すのでしょうか? 落合さんと、書店の魅力や可能性を考えます。
■「声を上げないと」…経営者の危機感
有働由美子キャスター
「本の聖地、東京・神保町。5日、ビルの一室に都内の書店経営者の皆さんが集まっていました。今、危機感を持っています」
「経営者は『若い人で(書店を)やりたいという人ができる環境をどう整備するかだなと思ってます』『潰れていく産業をなぜ守らないといけないのか、という意見に関しては私たち書店としても声を上げていかないといけない』などと訴えました」
「書店の現状が厳しいと感じている人に挙手が呼びかけられると、『みんなじゃないか、これ』という声が漏れ、続々と手が上がりました。経営は厳しいといいます」
■紙でも電子書籍でも…深刻な本離れ
「そんな皆さんが期待を寄せているのが、経済産業省が5日設置した、書店振興プロジェクトチームです。書店は新たな発見があり、視野も広がる街の文化拠点だから、国が支援していこうというものです。なぜ、今なのでしょうか?」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「店主の皆さんは悩んでいましたが、実際大変です。出版科学研究所によると、書店の数は2003年度に全国で2万880ありましたが、2022年度は1万1495と半分近くに減っています」
「本が読まれていません。文部科学省の調査(2022年)で21歳の若者に1か月に読んだ紙の書籍の数(雑誌と漫画を除く)を聞いたところ、0冊が62%でした。紙ではなく電子書籍ではどうか聞いてみたところ、0冊という回答は78%もありました」
有働キャスター
「紙だろうが電子だろうが、全然本を読んでいないということですね。落合さんは読書家で、大学の教員でもいらっしゃいます」
■なぜ本を読むのか…落合さんに聞く
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「もし学生に『なぜ本を読まないといけないか』と言われたら、『知識がまとまって書いてあるし、本でないとゲットできない知識がいっぱいあるから』と答えます」
「みんなが知らないことの方が、みんなが知っていることより重要なので、その意味では本は読んだ方がいいと思います」
「個人としては1日1冊は本を読むようにしています。速読は高校の時から割と得意でした。そのうち仕事しそうだな、と思うような本を買って読んでいます」
■店長「本屋は楽しい場所じゃないと」
有働キャスター
「書店の魅力に気づけば、本を自然と手に取ると思いますが…」
小野委員
「5日に取材した東京・文京区の往来堂書店では、一見すると普通の書店ですが、レジにはチラシが多くありました。トークイベントや読書会、写真教室などをこの書店の中で開いています」
店長
「本屋は楽しい場所じゃないといけない。店内で棚を移動してスペース作って開催しています。月に1、2回ですね」
小野委員
「このようにして足を運んでもらえば、書店の中は魅力的な世界です。お客さんも楽しんでいます」
■経産省、ヒアリングで支援策を検討へ
小野委員
「経産省は今後、書店経営者などからヒアリングして支援策を考えていきたいとしています。一方でネットでは、『需要がなくなった書店に税金を投入するのは無駄ではないか』『図書カードを配布した方が本を買うのでは?』という厳しい意見もあります」
有働キャスター
「書店の将来を考えた時に、どうしたらいいでしょうか?」
落合さん
「僕はどちらかというと古書店にお世話になることが多いです。貴重な本の倉庫、つまり僕個人では取っておけないものを保管しておいてくれると思って行っています」
「一般的な書店について言えば、なくなってしまうと文化的な損失は確かにあるし、リアルの書店だからこその本との偶然の出合いはあると思います」
「そのため、例えば専門性を高めつつオンラインを併用して(ニッチな商品に注力して)ロングテールの需要に応えられるような業態には可能性があると考えているので、支援した方がいいと思います」
■経産省、ヒアリングで支援策を検討へ
有働キャスター
「私は書店にいると将来の可能性のようなものを見つけて楽しくなるのですが、『子どもたちにとってはYouTubeで足りてしまうからいいや』と思う人もいるかもしれません」
「子どもたちに本を読みなさい、楽しみなさいとよく言いますが、だったらまずは大人が書店に足を運んで本の楽しさを知らなければ、と思います。みんなが大好きな(小説を音楽にするユニットの)YOASOBIも本の世界があってこそです」
(3月5日『news zero』より)